アプリで読む

無料・登録不要

しっかり者のすずの兵隊(アンデルセン)のあらすじ・登場人物

一本足で立ちつづける兵隊

  • 幻想
  • 翻訳

アンデルセン 訳者 楠山正雄 

文字数
4,926字
読了目安
約10分
表記
新字新仮名

この作品について

アンデルセンが1838年10月、『子どものための童話集』新集の第1冊に「野の白鳥」などと並べて発表した童話(原題「Den standhaftige Tinsoldat」)を、楠山正雄が訳したもの(同和春秋社『新訳アンデルセン童話集』第一巻)。民話や先行する物語に拠らずに書いた、アンデルセン最初の創作童話とされる。古いすずのさじ一本から鋳られた二十五人の兵隊のうち、材料が足りずに一本足で生まれた一人が、ボール紙のお城の戸口で片足を高く上げて立つ踊り子に心をひかれる。口をきかず、顔色ひとつ変えずに立ちつづける兵隊のかたくなさと、子ども部屋の真夜中にはじまるおもちゃたちの遊びとが、短い紙数のなかに描かれる。バレエやアニメーションにも翻案されてきた。

あらすじ

男の子が誕生日に、一本の古いすずのさじから生まれた二十五人のすずの兵隊をもらう。最後に作られた一人だけはすずが足りず一本足だったが、ほかの兵隊と同じようにしっかりと立っていた。机の上のボール紙のお城の戸口には、片足を高く上げた紙の踊り子が立っており、兵隊は彼女も一本足だと思って心をひかれる。真夜中、おもちゃたちが遊びはじめると、びっくり箱の黒い小鬼が兵隊に目をそらせとすごむが、兵隊は聞こえないふりをする。翌朝、窓辺に置かれた兵隊は、小鬼のしわざか風のせいか、三階から通りへ落ちてしまう。雨のあと、町の子どもたちが新聞紙の舟に兵隊を乗せてどぶへ流す。舟は下水の橋の下をくぐり、通行証を出せとどぶねずみに追いかけられ、掘割への滝に押し流されて沈むが、兵隊は銃剣を肩に姿勢をくずさない。水に落ちたところを大きな魚にのみこまれ、その魚が市場で買われてさばかれると、兵隊はもとの家の部屋に戻ってくる。踊り子と見つめ合うのもつかの間、小さな男の子が兵隊をだんろへ投げこむ。炎のなかでとけていく兵隊のもとへ、風にさらわれた踊り子が飛びこんできて燃えつきた。翌日、灰の中には小さなすずのハート形と、黒こげになった踊り子の金ぱくだけが残っていた。

登場人物

冒頭部(原文より)

 あるとき、二十五人すずの兵隊がありました。二十五人そろってきょうだいでした。なぜならみんなおなじ一本の古いすずのさじからうまれたからです。みんな銃剣をかついで、まっすぐにまえをにらめていました。みんな赤と青の、それはすばらしい軍服を着ていました。ねかされていた箱のふたがあいて、この兵隊たちが、はじめてこの世の中できいたことばは、 「やあ、すずの兵隊だ。」ということでした。このことばをいったのはちいちゃな男の子で、いいながら、よろこんで手をたたいていました。ちょうどこの子のお誕生日だったので、お祝にすずの兵隊をいただいたのでございます。  この子はさっそく兵隊をつくえの上にならべました。それはおたがい生きうつしににていましたが、なかで、ひとりが少しちがっていました。その兵隊は一本足でした。こしらえるときいちばんおしまいにまわったので、足一本だけすずがたりなくなっていました。でも、この兵隊は、ほかの二本足の兵隊同様、しっかりと、片足で立っていました。しかも、かわったお話がこの一本足の兵隊にあったのですよ。

「しっかり者のすずの兵隊」アンデルセン(青空文庫)

末尾部(原文より)

 すずの兵隊はあかあかと光につつまれながら立っていました。そのうち、ひどいあつさをかんじて来ました。でもこのあつさはほんとうの火であついのか、心臓のなかの血がもえるのであついのか、わかりませんでした。やがてからだの色はすっかりはげてしまいました。でも、これも長旅のあいだでとれたのか、心のかなしみのためにはげたのか、それもわかりません。兵隊は踊ッ子の顔をみました。むすめも兵隊を見返しました。そのうちからたがとろけていくようにおもいました。でも、やはり銃剣肩に、しっかり立っていました。そのとき出しぬけに戸がばたんとあいて。吹きこんだ風が踊ッ子をさらいますと、それはまるで空をとぶ魔女のようにふらふらと空をとびながら、だんろのなかの、ちょうど兵隊のいるところへ、まっしぐらにとびこんで来ました。とたんに、ぱあっとほのおが立って、むすめはきれいに焼けうせてしまいました。  するうち、すずの兵隊は、だんだんとろけて、ちいさなかたまりになりました。  そうして、あくる日女中が、灰をかきだしますと、兵隊はちいさなすずのハート形になっていました。けれども踊ッ子のほうは、金ぱくだけがのこって、それは炭のようにまっくろにこげていました。

「しっかり者のすずの兵隊」アンデルセン(青空文庫)

名文

その兵隊は一本足でした。こしらえるときいちばんおしまいにまわったので、足一本だけすずがたりなくなっていました。でも、この兵隊は、ほかの二本足の兵隊同様、しっかりと、片足で立っていました。

二十五人のすずの兵隊のうち、ひとりだけ一本足の主人公の紹介。欠けた身でもまっすぐ立つ姿に、その誇り高さが表れる。

原文を読む

原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。

青空文庫の図書カード

同じ作家の作品

近い作品