アラビヤンナイト 船乗シンドバッド(菊池寛)のあらすじ・登場人物
七度の航海、七つの冒険
- 冒険
- 幻想
- 翻訳
- 文字数
- 31,863字
- 読了目安
- 約1時間4分
- 表記
- 新字新仮名
この作品について
菊池寛が子ども向けにまとめた『アラビヤンナイト』(千夜一夜物語)の第四話で、「船乗りシンドバッドの冒険」を語り直したもの。バグダッドの貧しい荷かつぎヒンドバッドが、豪邸の主人で大金持ちの船乗りシンドバッドに招かれ、彼の七度の航海の話を聞くという枠物語の形をとる。島だと思って上陸した大鯨、巨大な鳥ロックとその卵、ダイヤモンドの谷、人を食う大入道など、海の向こうの驚異と危険に満ちた冒険が、一夜ごとに語り継がれる。貧しい者と富める者の対話で始まり、苦労の末につかんだ富という結びまでを、平明な「です・ます」体でまとめている。
あらすじ
バグダッドの貧しい荷かつぎヒンドバッドは、ある暑い日、豪邸の前で休みながら、遊んで暮らす金持ちと汗水たらしても貧しい自分との違いを嘆く。それを聞きつけた屋敷の主人で、世界中を航海した船乗りシンドバッドは、彼を宴に招き、この富は命がけの苦労で築いたものだと言って、七度の航海の話を一夜ずつ語りはじめる。最初の航海では、草の生えた島だと思って上陸したのが眠っていた大鯨の背中で、海に投げ出されて見知らぬ島へ流れ着き、やがてその島の港で自分の荷を積んだ船に再会した。二度めは島に置き去りにされ、巨大な鳥ロックの足に体を結びつけて大蛇のうごめくダイヤモンドの谷へ運ばれ、商人たちが投げこむ肉の塊にしがみついて、ダイヤモンドを手に脱出する。三度めは人を食う黒い大入道の島に漂着し、仲間と力を合わせて大入道の目を潰して逃れ、大蛇の島も切り抜けた。四度めは異国の島で妻を迎えるが、その国では夫婦の一方が死ぬと残された者も一緒に生き埋めにされる掟があり、妻の死とともに洞穴へ葬られたシンドバッドは、獣の通り道をたどって外へ逃れる。五度めはロックの卵を割った報いで船を沈められ、背中に乗って離れない老人に苦しめられ、六度めは難破のすえ筏で地下の川を下ってセレンジブ王の国に至った。最後の航海はカリフの使者としての旅で、帰り道に海賊に捕らえられて奴隷に売られ、象を射る仕事のなかで象牙の山を見つけて自由の身となる。話を聞き終えたヒンドバッドは、あなたの苦労に比べれば自分の苦労など足元にも及ばないと頭を下げ、シンドバッドは毎晩の食事と金貨を与えた。
登場人物
- シンドバッド バグダッドの大金持ち。七度の航海で数々の冒険をした船乗り
- ヒンドバッド バグダッドの貧しい荷かつぎ。シンドバッドに招かれて航海の話を聞く
- ロック 卵が丸屋根ほどもある巨大な鳥
- セレンジブ王 六度めの航海でシンドバッドを手厚くもてなした島の王
- カリフ バグダッドの君主。シンドバッドを使者としてセレンジブへ送る
冒頭部(原文より)
バクダッドの町に、ヒンドバッドという、貧乏な荷かつぎがいました。荷かつぎというのは、鉄道の赤帽のように、お金をもらって人の荷物を運ぶ人です。 ある暑い日のお昼から、ずいぶん重い荷物をかついで歩いていましたが、しずかな通りへさしかかった時、大そうりっぱな家が立っているのが、目に入りました。ヒンドバッドは、その門のそばで、少し休むことにしました。
「アラビヤンナイト 船乗シンドバッド」菊池寛(青空文庫)
末尾部(原文より)
と、言いました。 シンドバッドは、この答えを聞いて、大へんよろこびました。そして、ヒンドバッドに、これから毎晩、ごちそうをするから、たべに来るように、と言いました。そしてまた、金貨を百円やりました。 それで、その後、ヒンドバッドは、とうとうシンドバッドのぼうけんの話を、残らずおぼえてしまいましたとさ。
「アラビヤンナイト 船乗シンドバッド」菊池寛(青空文庫)
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