雪の女王(アンデルセン)のあらすじ・登場人物
心に刺さった鏡のかけら
- 幻想
- 翻訳
- 文字数
- 39,542字
- 読了目安
- 約1時間19分
- 表記
- 新字新仮名
この作品について
アンデルセンが1844年に発表した、「七つのお話からできている物語」という副題をもつ長めの童話(原題「Snedronningen」)を、北欧文学者の矢崎源九郎が訳したもの(新潮文庫『マッチ売りの少女 アンデルセン童話集Ⅲ』)。悪魔の鏡のかけらが目と心臓に入って人が変わった少年カイと、雪の女王に連れ去られた彼をさがして北の果てまで旅する少女ゲルダの物語である。カラス、山賊の娘、トナカイなど旅先で出会う者たちに助けられて進む構成は多くの幻想物語に受け継がれ、アニメーション映画の原作としても知られる。楠山正雄訳も収録しており、訳の語り口を読みくらべることもできる。
あらすじ
こびとの悪魔が、よいものは小さく、醜いものは大きくゆがめて映す鏡をつくった。天まで持ちあげようとして落とした鏡は砕け、その細かなかけらが世界じゅうに散らばって、目に入れば物がゆがんで見え、心臓に入れば心が氷のかたまりになる。大きな町の屋根裏で、雨どいのバラの花をはさんで仲よく暮らしていた少年カイと少女ゲルダ。ある日、カイの目と心臓にそのかけらが入り、少年はバラをけなし、ゲルダをからかうようになる。冬のある日、広場でそりをつないで遊んでいたカイは、大きな白いそりに乗った雪の女王に連れ去られてしまった。春になると、ゲルダは大切な赤い靴を川に投げこんでカイをさがす旅に出る。魔法を知るおばあさんの花の庭に引きとめられ、カラスに導かれて王子と王女の御殿を訪ね、山賊にとらえられながらも山賊の娘に助けられ、トナカイの背に乗ってラップランドのおばあさん、フィンランドの女のもとを経て、雪の女王のお城へとたどり着く。そこでは、寒さでどす黒くなったカイが、氷のかけらを並べて「永遠」という言葉を作ろうとしていた——。
登場人物
- ゲルダ カイをさがして北の果てまで旅する少女
- カイ 悪魔の鏡のかけらが目と心臓に入り、雪の女王に連れ去られる少年
- 雪の女王 冬の雪とともに現われ、カイを氷のお城へ連れていく
- 山賊の娘 ゲルダをとらえた山賊の娘。トナカイを与えて旅を助ける
- おばあさん カイとゲルダの祖母。聖書を読み、讃美歌を教える
冒頭部(原文より)
さいしょのお話 鏡と、鏡のかけらのこと さあ、いいですか、お話をはじめますよ。このお話をおしまいまで聞けば、わたしたちは、いまよりも、もっといろいろなことを知ることになります。それは、こういうわけなのですよ。 あるところに、ひとりのわるいこびとの妖魔がいました。それは妖魔の中でも、いちばんわるいほうのひとりでした。つまり、「悪魔」です。ある日のこと、悪魔は、たいそういいごきげんになっていました。というのは、この悪魔は、まことにふしぎな力をもつ、一枚の鏡をつくったからでした。
「雪の女王」アンデルセン(青空文庫)
末尾部(原文より)
ふたりは、町の中へはいって、おばあさんの家の戸口まで行きました。そして、階段をのぼって、部屋の中にはいりました。部屋の中のようすは、なにもかもむかしのままです。時計は、カチ、カチ、いっていました。時計の針も、まわっていました。けれども、入り口を通ったときに、ふたりは、いつのまにか、自分たちがおとなになっているのに、気がつきました。屋根の雨どいの上に咲いているバラの花が、開かれた窓から、中をのぞいていました。そこに、小さな子供椅子が置いてありました。カイとゲルダは、めいめいの椅子に腰をおろして、手をにぎりあいました。ふたりは、雪の女王のお城の、なに一つない、寒々とした美しさを、おもくるしい夢のように、忘れてしまいました。 おばあさんは、神さまの明るいお日さまの光をあびて、聖書を読んでいました。「もし、なんじら、おさな子のごとくならずば、天国に入ることを得じ!」 カイとゲルダは、たがいに目を見あわせました。そのとき、きゅうに、あの古い讃美歌の意味が、よくわかってきました。 バラの花 かおる谷間に、 あおぎまつる おさな子イエスきみ! こうして、このふたりは、おとなであって、しかも子供のふたりは、そうです、心の子供たちは、そこにすわっていました。いまは夏でした。暖かい、めぐみゆたかな夏でした。
「雪の女王」アンデルセン(青空文庫)
名文
小さな鏡のかけらは、幾人かの人たちの心の中にさえ、はいりこみました。しかし、そうなると、ほんとうにおそろしいことです。その人の心は、ひとかたまりの氷のようになってしまうのです。
アンデルセン『雪の女王』第一のお話から。悪魔の鏡のかけらが心を凍らせるという設定が、この長い物語全体を動かしていく。
バラの花 かおる谷間に あおぎまつる おさな子イエスきみ
ゲルダが覚えた讃美歌の一節。カイとふたりで歌ったこの歌とバラの花が、ふたりの絆のしるしとして物語に繰り返し響く。
原文を読む
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