ナイチンゲール(アンデルセン)のあらすじ・登場人物
機械の鳥と森の小鳥
- 幻想
- 翻訳
- 文字数
- 12,948字
- 読了目安
- 約26分
- 表記
- 新字新仮名
この作品について
アンデルセンが1843年に発表した童話(原題「Nattergalen」。「小夜啼鳥」「夜鳴きうぐいす」の題でも訳される)を、北欧文学者の矢崎源九郎が訳したもの(新潮文庫『人魚の姫 アンデルセン童話集Ⅰ』)。むかしの中国の皇帝の御殿を舞台に、森にすむ地味な小鳥ナイチンゲールの歌と、宝石で飾られた機械仕掛けの鳥とを対比させ、ほんとうの美しさとは何かを問いかける。歌姫ジェニー・リンドへの作者の思慕が背景にあるともいわれ、短いながら深い余韻を残す。
あらすじ
むかし中国の皇帝の御殿は、世界でいちばんりっぱな御殿で、その庭は海辺の森まで続いていた。森にはナイチンゲールが一羽すんでいて、その歌声は貧しい漁師にも仕事を忘れさせるほどだった。世界じゅうの旅人が書いた本でそのことを知った皇帝は、今夜こそ鳥を連れてこいと命じる。御殿の者は誰ひとりその鳥を知らず、ようやく台所で働く小娘の案内で森へ行ってみると、それは灰色の地味な小鳥だった。ところが御殿で歌を聞いた皇帝は、目に涙をうかべるほど心をうたれ、ナイチンゲールは金のとまり木をあてがわれ、散歩にも十二人の召使がつく身分で御殿で暮らすことになる。ある日、日本の天皇から、ダイヤモンドやルビーやサファイヤをちりばめた機械仕掛けのナイチンゲールが贈られてきた。ねじを巻けばいつでも同じワルツをうたうその鳥に皆が夢中になるあいだに、ほんもののナイチンゲールは窓から森へ飛び去り、皇帝は恩知らずな鳥だとして国から追放してしまう。五年後、機械の鳥はすっかりすり減り、年に一度しか鳴らせなくなった。そして重い病に倒れた皇帝の胸の上に、死神がのしかかる——。
登場人物
- ナイチンゲール 森にすむ地味な小鳥。その歌は人の心を深くうつ
- 皇帝 中国の皇帝。ナイチンゲールの歌に涙するが、のちに追放する
- 台所の小娘 御殿の台所で働く貧しい娘。ナイチンゲールのいる森を知っている
- 楽長 機械仕掛けの鳥をほめちぎり、二十五冊も本を書く
- 死神 病の皇帝の胸の上にのしかかる
冒頭部(原文より)
中国という国では、みなさんもごぞんじのことと思いますが、皇帝は中国人です。それから、おそばにつかえている人たちも、みんな中国人です。さて、これからするお話は、もう今からずっとむかしにあったことですけれど、それだけに、かえって今お話しておくほうがいいと思うのです。なぜって、そうでもしておかなければ、忘れられてしまいますからね。 皇帝の住んでいる御殿は、世界でいちばんりっぱな御殿でした。なにもかもが、りっぱな瀬戸物で作られていました。
「ナイチンゲール」アンデルセン(青空文庫)
末尾部(原文より)
「では、一つだけ、お願いしておきます。陛下に、なにもかも申しあげる小鳥がおりますことを、どなたにもおっしゃらないでくださいませ。そうしますれば、いっそう、うまくまいりますでしょう」 こう言って、ナイチンゲールは飛んでいきました。 召使たちが、おなくなりになった皇帝を見に、はいってきました。――や、や、みんなは、びっくりぎょうてんして、そこに立ちどまってしまいました。すると、皇帝が言いました。 「おはよう!」
「ナイチンゲール」アンデルセン(青空文庫)
名文
「わたくしは、皇帝陛下のお目に、涙が浮びましたのを、お見うけいたしました。それこそ、わたくしにとりましては、なににもまさる、宝でございます。皇帝陛下の涙には、ふしぎな力があるのでございます。ほんとうに、ごほうびは、それでじゅうぶんでございます」
初めて皇帝の前で歌ったナイチンゲールの言葉。金の褒美より聞き手の涙を尊ぶ姿に、真の芸術とは何かという主題が表れる。
原文を読む
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