かけっこ(アンデルセン)のあらすじ・登場人物
審判たちの勝手な理屈
- 風刺
- 翻訳
- 文字数
- 3,942字
- 読了目安
- 約8分
- 表記
- 新字新仮名
この作品について
アンデルセンが1858年に発表した童話(原題「Hurtigløberne」。「速く走るもの」の意)を、矢崎源九郎が訳したもの(新潮文庫『マッチ売りの少女 アンデルセン童話集Ⅲ』)。一年を通して最も速く走った者に出る二つの賞をめぐり、ウサギ、カタツムリ、ツバメ、ハエ、審判たちが、会話だけでめいめいの言い分を並べていく小品。公平を装った判定の理屈や、自分の手柄を言い立てる者たちのやりとりを、動物と植物の声でユーモラスに見せる。
あらすじ
一年を通していちばん早く走った者に、大小二つの賞が出る。一等賞をもらったウサギは、審判に親類や友人がいるときは公平に決めるべきだと言い、二等賞のカタツムリも自分こそ一等だと不満を述べる。審判のさくのくいは熱心さと親切を考えたのだと言い、ツバメ、ハエ、野バラまでが、次々と自分や別の者こそふさわしいと言い立てる。森の測量標は、アルファベットを数えて、ウサギくんの頭文字Hとカタツムリくんの頭文字Sから一等と二等を決めたと説明し、ラバはウサギの美しい耳に票を入れたという。最後にラバは、一等賞はキャベツ畑に出入り自由、カタツムリは石垣でコケをなめ、いずれ審判の一員にもなると語り、これから先が楽しみだと結ぶ。
登場人物
- ウサギ 一等賞をもらうが、審判の公平さに文句を言う
- カタツムリ 二等賞。自分こそ一等だと言い張る
- さくのくい・森の測量標・ラバ それぞれ理屈をつける審判たち
- ツバメ・ハエ・野バラ 自分こそ、と考えをのべる
冒頭部(原文より)
ごほうびの賞が、一つ出ました。いいえ、ほんとうは二つです。小さい賞と大きい賞の二つです。いちばん早いものが、この賞をもらえます。といっても、それは一回きりの競走で、早かったものがもらえるのではありません。一年じゅうをとおして、いちばん早く走ったものがもらえるのです。 「ぼくは、一等賞をもらった」と、ウサギが言いました。「審判官の中に、親類や親しい友だちが、まじっているときには、よくよく注意して、正しくきめるようにしなければいけない。カタツムリくんは二等賞をもらったが、ぼくに言わせれば、これは、どうもばかにされたようで、おもしろくない」
「かけっこ」アンデルセン(青空文庫)
末尾部(原文より)
「キャベツ畑に、自由に、出入りできることだよ」と、ラバが言いました。「この賞は、ぼくが言い出したものなんだよ。ウサギくんは、その賞をもらわなければならんし、また、もらうべきだよ。なにしろぼくは、よく考え、よく仕事をする審判官として、賞をもらうもののために、いっしょうけんめい考えたんだからね。だから、ウサギくんのことは、もうだいじょうぶ。 カタツムリくんのほうは、石垣の上にすわって、コケやお日さまの光をなめてもよい、ということになったんだ。それに、近いうちには、かけっこの審判官のひとりにも、えらばれることになっている。かけっこの早いカタツムリくんのような人が、審判官の仲間に加わるということは、まったくいいことさ。 ぼくは、はっきりと言っておくが、これからさきを、たいへん楽しみにしている。なにしろ、はじまりが、こんなにすばらしいんだからねえ」
「かけっこ」アンデルセン(青空文庫)
原文を読む
原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。
同じ作家の作品
近い作品
- スリーピー・ホローの伝説
- リップ・ヴァン・ウィンクル
- 鱷 1865年1月
- まざあ・ぐうす 1921年(大正10年)
- 阿Q正伝 1932年(昭和7年)11月
- 狂人日記 1937年(昭和12年)6月