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アンネ・リスベット(アンデルセン)のあらすじ・登場人物

母になれなかった女

  • 心理
  • 翻訳

アンデルセン 訳者 矢崎源九郎 

文字数
15,706字
読了目安
約31分
表記
新字新仮名

この作品について

アンデルセンが1859年に発表した童話(原題「Anne Lisbeth」)を、矢崎源九郎が訳したもの(新潮文庫『人魚の姫 アンデルセン童話集Ⅰ』)。美しい娘が自分の子を貧しい家にあずけ、貴族の乳母として栄えるが、やがて心の底にしまいこんだ罪に向きあわされるまでを描く、長めの作品。迷信や幻想の場面を通して、人間の良心が目覚める瞬間を重く語る。アンデルセンの童話の中でも暗い色調をもつ一編である。

あらすじ

美しい娘アンネ・リスベットは、みにくい赤ん坊を産むと、みぞほり人夫の家にあずけ、自分は伯爵家の赤ちゃんのうばになる。何年かたち、子供は発育がわるいまま、あずけ先で食べるために働き、だれにもかわいがられずに育つ。やがて小さな船で海に出た子は、嵐の中、船が岩にぶつかって、船頭とともにしずむ。一方アンネ・リスベットは、町の奥さんになり、かつてのぼっちゃまに会いたくなって屋敷を訪ね、冷たくあしらわれて帰る。みぞほり人夫のおかみさんから、子が死んだと聞かされても、何も言わない。その夜、うたた寝の夢で、最後の審判に子供が天使となって迎えにくるが、大ぜいの女たちがしがみつき、そでがちぎれて落ちる。帰り道、海べでゆうれいの言い伝えを思い出し、「うめてください」という声を聞き、はじめて自分の罪に目ざめる。海べで夜通し砂をほって夜が明け、病気になるが、一年のあいだ子供を心にとめて、浜のゆうれいを待ちつづける。ある日、教会の聖壇の前にひざまずいたまま、その日の夕べに魂は天にのぼる。

登場人物

冒頭部(原文より)

 アンネ・リスベットは、まるで、ミルクと血のようです。若くて、元気で、美しい娘です。歯はまっ白に、ピカピカ光り、目はすみきっています。足は、ダンスをしているように、軽々としています。気持は、それよりももっと軽くて、陽気です。  で、このアンネ・リスベットは、どうなったでしょうか。赤ん坊の、おかあさんになりました。「みにくい赤ん坊」のおかあさんに。――そうです。赤ん坊は、きれいな子ではありませんでした。その子は、生れるとすぐ、みぞほり人夫の、おかみさんのところに、あずけられてしまいました。  おかあさんのアンネ・リスベットは、伯爵さまのお屋敷に、働きに行きました。アンネ・リスベットは、絹とビロードの着物を着て、りっぱな部屋の中に、すわっていました。アンネ・リスベットのところには、すきま風一つ、吹きこんではきませんでした。だれも、アンネ・リスベットに、らんぼうな言葉をかけてはなりませんでした。そんなことをすれば、アンネ・リスベットのからだに、さわるかもしれませんから。なにしろ、アンネ・リスベットは、伯爵さまの、赤ちゃんの、うばなのですから。

「アンネ・リスベット」アンデルセン(青空文庫)

末尾部(原文より)

 こう言って、前にとっていった魂のはんぶんを、アンネ・リスベットにかえしました。それから、アンネ・リスベットを、この教会に案内してきたのです。 「いまは、わたしは、神さまのおうちにいます。ここでは、どんな人も、しあわせです」と、アンネ・リスベットは言いました。  お日さまが、すっかりしずみました。そのとき、アンネ・リスベットの魂は、高く高く、天にのぼっていきました。そこでは、もうおそろしいと思うことはありません。この世で、りっぱにたたかいぬいた人にとってはです。アンネ・リスベットこそ、そういう、りっぱにたたかいぬいた人なのです。

「アンネ・リスベット」アンデルセン(青空文庫)

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