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巨男の話(新美南吉)のあらすじ・登場人物

白鳥を背に塔を積む巨男

  • 幻想

新美南吉 

文字数
3,832字
読了目安
約8分
表記
新字新仮名

この作品について

新美南吉が少年時代に書いた童話で、年譜では1929年(昭和4年)、16歳の6月に脱稿したとされる。遠い森の中で、恐ろしい魔女の母と暮らす巨男を主人公にした西洋風の物語で、魔女の魔法で白鳥に変えられた王女と、その白鳥をひそかに養う巨男の姿が描かれる。「〜でしたよ」と語りかける口調で語られ、王の命令による苦しい旅や、夜ふけの都の空に響く槌の音など、場面が絵のように印象を残す。のちに絵本にもなった、南吉の初期童話の一つである。

あらすじ

遠い森の中に、恐ろしい魔女とその息子の巨男が住んでいた。ある月夜、森で道に迷った王女と二人の侍女が宿を求めてくる。翌朝、魔女は三人を魔法で鳥に変えて窓から放り出すが、白鳥になった王女だけは夕方になると悲しげに鳴いて戻ってきた。巨男はふびんに思い、白鳥をこっそり飼う。

年老いた魔女は死の間際、魔法をとく方法を聞かれて、鳥獣が涙を流せばもとの姿に戻る、と言い残す。巨男は白鳥を連れて都へ向かうが、白鳥は決して涙を流さない。都の人々は、魔女の息子である巨男を遠まわしに殺そうと、王に大理石の塔を建てることをすすめる。足に鉄の鎖をつけられた巨男は、山と砂漠を越えて南の部落から大理石を運び、白鳥を背にとまらせたまま、昼も夜も塔を積み上げていく。

塔が宮殿のどの建物よりも高くなった風の強い宵、都の人々も王も、ようやく巨男をあわれに思い、翌日には仕事をやめさせようと決める。そうとは知らない巨男は、自分が死ねば白鳥は涙を流すにちがいないと考え、白鳥と最後の頬ずりをして、塔の上から身を投げる。白鳥の涙は滝のようにあふれ、魔法がとけて王女の姿に戻った。王と都の人々は泣いて巨男にわび、そのむくろは月桂樹の葉におおわれて都の東の砂丘に葬られる。王女は、いつまでも白鳥のまま巨男の背中にとまっていたかったと語り、南国の人々はいまも、曇った夜にうるんで見える金星を「巨男の灯」と呼んでいる。

登場人物

冒頭部(原文より)

 巨男とお母さんの住んでいたところはここからたいへん遠くのある森の中でした。  巨男のお母さんはおそろしい魔女でした。ほら鷲のような高い鼻や、蛇のような鋭い眼を持ったあのおそろしい魔女でした。  それはあるお月夜のことでしたよ。

「巨男の話」新美南吉(青空文庫)

末尾部(原文より)

「私は、いつまでも白鳥でいて、巨男の背中にとまっていたかったわ。」  空がくもっていて、金星がたった一つうるんでみえる夜ふけなど、南国の人びとはいまでも、 「あれは、巨男の灯だ。」と空をあおいで申します。

「巨男の話」新美南吉(青空文庫)

原文を読む

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