あけがた(宮沢賢治)のあらすじ・登場人物
夢の中で着物を笑われる
- 幻想
- 文字数
- 1,940字
- 読了目安
- 約4分
- 表記
- 新字旧仮名
- 種別
- 小説
この作品について
「おれ」が、青黒く淀んだ室に座っているところから始まる短い断章。獣医の有本、金襴の羽織の霧積らに着物のことで笑われ、外へ出て川に沿って歩くうち、洪水の跡の島で測量技師を名乗る男に出会う。場面が理由なくつながって移っていくさまは夢の記述のようで、物語としては結ばれずに途切れる。文字遣いは新字旧仮名。
あらすじ
「おれ」は青黒く淀んだ室の灰色の席に落ち着かずにいる。そこには獣医の有本と、さまざまなものが混ざった「区分キメラ」がいて、着物の話をしている。そこへ金襴の羽織を着た霧積が入ってきて、今朝は支那版画展覧会の幹事だと得意になり、おれの着物を笑いだす。有本もキメラも笑う。おれは着物が足りない理由が分からず悲しくなり、外へ出る。川ばたの白い家で、知らない赤い女におれのスリッパを裏口の土間へ投げ出され、女がそれを直すのを黙って見る。外では一月十五日の村の踊りの太鼓が向こう岸から響き、川は冷たく激しく鳴っている。おれは川を溯って、洪水でできたらしい大きな島に気づき、いつのまにか島の上に立っている。洪水がまた襲ってくるのではないかと考え、弟が助けに来るだろうかと考える。島が元の岸とくっつくと、白いさるのこしかけの生えた幹に「志木、大高」と彫られた文字がある。痩せてオーバーを着た男が、志木と名乗り、ここの測量に着手したのは私だと堅苦しく告げる。おれは、志木という名をどこかで聞いたと思う。
登場人物
- おれ 着物を笑われる語り手
- 有本 獣医
- 霧積 金襴の羽織の男。版画展の幹事
- 志木 川の島で測量に着手したと名乗る男
冒頭部(原文より)
おれはその時その青黒く淀んだ室の中の堅い灰色の自分の席にそわそわ立ったり座ったりしてゐた。 二人の男がその室の中に居た。一人はたしかに獣医の有本でも一人はさまざまのやつらのもやもやした区分キメラであった。
「あけがた」宮沢賢治(青空文庫)
末尾部(原文より)
いつか島が又もとの岸とくっついてゐた。その手前はうららかな孔雀石の馬蹄形の淵になってゐた。おれは立ちどまった。そして又口笛を吹いた。そして雑木の幹に白いきのこを見た。まっしろなさるのこしかけを見た。 それから志木、大高と彫られた白い二列の文字を見た。 瘠せてオーバアコートを着てわらじを穿いた男が青光りのさるとりいばらの中にまっすぐに立ってゐた。 「私は志木です。こゝの測量に着手したのは私であります。」帽子をとっていやに堅苦しくその男が云った。志木、志木とはてな、どこかで聞いたぞとおれは思った。
「あけがた」宮沢賢治(青空文庫)
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