ガドルフの百合(宮沢賢治)のあらすじ・登場人物
稲妻に照らされる白百合
- 幻想
- 青春
- 文字数
- 4,683字
- 読了目安
- 約9分
- 表記
- 新字新仮名
この作品について
宮沢賢治の短編童話。雷雨の中を一人歩く旅の青年ガドルフが、逃げ込んだ無人の家の窓から、稲光に浮かぶ庭の白百合を見つめる一夜を描く。青年の心の動きが、闇と電光の明滅、鉱物や色彩の言葉の連なりで語られ、賢治の幻想的な文体がよく出ている。
あらすじ
みじめな旅の青年ガドルフは、朝からポプラ並木の道を歩きつづけていたが、次の町はまだ見えない。そこへはげしい雷雨が襲い、暗くなった道の左に大きな黒い家が見えた。ガドルフは玄関へ駆け込んで声をかけたが、家は暗く、人の気配がない。濡れた外套を脱ぎ、階段の窓から外をのぞくと、白いものが五つ六つこちらをのぞいていた。稲光に照らされたのは、庭いっぱいに咲く白百合だった。ガドルフは嵐の中の百合に、自分の恋を重ねて見つめる。電光のたびに百合は白く浮かび、風にゆらぐ。やがて一本の百合が折れて地面に横たわるのを見たガドルフは、窓を閉め、階段で眠ろうとする。夢うつつのうちに、二人の男が格闘して階段を転げ落ちる夢を見て目を覚ますと、雷はもう遠ざかり、嵐に耐えた百合の群れが、一本を除いてまっ白に立っていた。ガドルフは、雨があがったら街道へ出ようと考え、おれの百合は勝ったのだと思う。
登場人物
- ガドルフ 旅の青年。次の町へ向かう途中、雷雨を避けて無人の家に入る
冒頭部(原文より)
ハックニー馬のしっぽのような、巫戯けた楊の並木と陶製の白い空との下を、みじめな旅のガドルフは、力いっぱい、朝からつづけて歩いておりました。 それにただ十六哩だという次の町が、まだ一向見えても来なければ、けはいもしませんでした。
「ガドルフの百合」宮沢賢治(青空文庫)
末尾部(原文より)
(これは暁方の薔薇色ではない。南の蝎の赤い光がうつったのだ。その証拠にはまだ夜中にもならないのだ。雨さえ晴れたら出て行こう。街道の星あかりの中だ。次の町だってじきだろう。けれどもぬれた着物をまた引っかけて歩き出すのはずいぶんいやだ。いやだけれども仕方ない。おれの百合は勝ったのだ。) ガドルフはしばらくの間、しんとして斯う考えました。
「ガドルフの百合」宮沢賢治(青空文庫)
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