ありときのこ(宮沢賢治)のあらすじ・登場人物
蟻の兵隊が見張る、一夜のきのこ
- 幻想
- 文字数
- 1,443字
- 読了目安
- 約3分
- 表記
- 新字新仮名
この作品について
宮沢賢治の掌編童話。霧の降る苔の森を守る蟻の歩哨のもとに、一夜のうちに現れた「まっ白な家」——それはきのこだった。蟻の兵隊たちの生真面目なやりとりを、賢治独特のユーモアと詩情で描く小品である。
あらすじ
苔いちめんに霧の降る朝、蟻の歩哨が鉄の帽子をかぶって、羊歯の森の前を行ったり来たり見張っている。そこへ二匹の蟻の子供がやって来て、楢の木の下に一夜で現れた「まっ白な家」を見つけてびっくりする。「家じゃない、山だ」「昨日はなかったぞ」。歩哨は緊張し、子供たちを伝令に立てて、アルキル中佐と陸地測量部へ「北緯二十五度東経六厘の処に、目的のわからない大きな工事ができました」と報告させる。やがて子供たちが帰ってきて言う——「あれはきのこというものだって。なんでもないって。アルキル中佐はうんと笑ったよ」「すぐなくなるから地図に入れなくてもいいって」。その言葉どおり、まっ白な工事はいつの間にか引っくり返っていた。蟻たちの生真面目なやりとりを、賢治らしいユーモアと詩情で描いた、愛らしい掌編童話である。
冒頭部(原文より)
苔いちめんに、霧がぽしゃぽしゃ降って、蟻の歩哨は鉄の帽子のひさしの下から、するどいひとみであたりをにらみ、青く大きな羊歯の森の前をあちこち行ったり来たりしています。 向こうからぷるぷるぷるぷる一ぴきの蟻の兵隊が走って来ます。 「停まれ、誰かッ」 「第百二十八聯隊の伝令!」
「ありときのこ」宮沢賢治(青空文庫)
末尾部(原文より)
向こうに魚の骨の形をした灰いろのおかしなきのこが、とぼけたように光りながら、枝がついたり手が出たりだんだん地面からのびあがってきます。二疋の蟻の子供らは、それを指さして、笑って笑って笑います。 そのとき霧の向こうから、大きな赤い日がのぼり、羊歯もすぎごけもにわかにぱっと青くなり、蟻の歩哨は、またいかめしくスナイドル式銃剣を南の方へ構えました。
「ありときのこ」宮沢賢治(青空文庫)
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