字余りとは
- 分類
- 文体・技法
- 読み
- じあまり
短歌・俳句などの定型詩で、句の音数が定められた五音・七音より多くなること。また、その句。反対に少ないものを字足らずという。「字」と呼ぶが、数えるのは文字の数ではなく音の数である。たとえば小倉百人一首では、小野小町の歌の初句「花の色は」が六音、山部赤人の歌の第二句「うち出でてみれば」が八音で、いずれも字余りになっている。古い和歌の字余りには規則性があることが知られている。江戸時代の国学者・本居宣長は『字音仮字用格』で、古歌の字余りの句には「あ」「い」「う」「お」という単独の母音の音節が含まれていることを指摘した。「花の色は」の「い」、「うち出でて」の「い」がそれに当たる。日本語には母音が二つ直接並ぶのを避ける傾向があり、母音だけの音節は前の音と融け合うように発音されたため、音数が多くても調べが崩れなかったと考えられている。この法則の発見は『万葉集』の訓読研究を大きく進め、のちに佐竹昭広らが補則を加えて検討を深めた。近代以降の短歌や俳句では、字余りは定型からの意図的なずれとしても用いられ、言葉を際立たせたり、感情の高ぶりを伝えたりする。定型をはみ出すことで、かえって定型の調べが意識されるのである。