物名とは

分類
文体・技法
読み
もののな

和歌の詠み方の一つで、歌の意味とは関わりなく、物の名を歌のなかに隠して詠み込むもの。また、その歌。隠し題ともいい、「ぶつめい」とも読む。たとえば『古今和歌集』の紀友則の「秋近う野はなりにけり白露のおける草葉も色かはりゆく」は、秋が近づいて野の草葉の色が移ろうさまを詠みながら、「あきちかうのはな」という音の連なりに、題の「きちかうの花」(桔梗の花)を隠している。隠した物名が歌の内容と関わる場合もあるが、多くは言葉の音だけを借り、表の意味とは別の名前がひそんでいる点に面白さがある。同じ音に二つの意味を重ねる掛詞とは区別され、言葉遊びの性格が強い知的な技巧である。『古今和歌集』は巻第十を「物名」の部立とし、鶯を隠した歌を巻頭に四十七首を収める。物名の部はのちの『拾遺和歌集』などにも設けられた。物名の部に入っていなくとも物の名を隠した歌はあり、短い語を隠したものは目立たないため、それと気づかれにくい。歌の各句の頭に一字ずつ物の名を置く折句も、物の名を詠み込む遊びとして近い関係にある。平安時代の歌人たちは、こうした遊戯的な技巧を通して、言葉の音への鋭い感覚を磨いた。

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