定家仮名遣いとは

分類
文体・技法
読み
ていかかなづかい

鎌倉時代初めに藤原定家が定めたとされる仮名の使い分けと、それを増補して中世から近世にかけて広く行われた仮名遣い。平安中期以降、発音の変化によって「を」と「お」、「え」「ゑ」「へ」、「い」「ゐ」「ひ」などが同じ音になり、書き分けが揺れていた。定家は古典を書写する際の基準として、著書『下官集』の「嫌文字事」の条に、これら三類八字の用例を示した。その基準は平安時代の実際の用例と異なるところがあり、「を」と「お」は、語のアクセントの高低によって書き分けたと考えられている。南北朝時代には行阿が『仮名文字遣』でこれを大幅に増補し、定家の権威もあって、歌人を中心に江戸時代まで規範として用いられた。江戸中期、僧の契沖は『万葉集』などの古い文献を調べて、定家仮名遣いが平安中期以前の用法から外れていることを指摘し、元禄8年(1695年)刊の『和字正濫鈔』で古い用例に基づく仮名遣いを示した。この契沖の仮名遣いが国学者に受け継がれて整えられ、明治以降に公の表記の基準となったのが歴史的仮名遣いである。契沖の説には定家仮名遣いの側から反論も出たが、やがて契沖の仮名遣いが主流となり、定家仮名遣いは一部で守られるにとどまった。中世の写本や和歌の資料を読むときには、今日の歴史的仮名遣いと異なる表記に出会うことがある。

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