聖三稜玻璃(山村暮鳥)のあらすじ・登場人物
竊盜金魚、強盜喇叭——言葉の実験
- 文字数
- 3,996字
- 読了目安
- 約8分
- 表記
- 旧字旧仮名
この作品について
1915年(大正4年)に刊行された山村暮鳥の第二詩集。「竊盜金魚/強盜喇叭/恐喝胡弓」と名詞を叩きつけるだけの「囈語」をはじめ、意味を放棄したかにみえる激烈な言語実験を並べ、当時の詩壇からほとんど黙殺と嘲笑をもって迎えられた。しかし言葉から意味の重力を剥ぎとろうとするその試みは、日本におけるダダイズム・モダニズム詩の先駆として、のちに高く再評価されることになる。題名は聖なる三稜の玻璃(プリズム)の意。
あらすじ
巻頭に「太陽は神々の蜜である/天涯は梁木である/空はその梁木にかかる蜂の巣である」とウパニシャッドを掲げて始まるこの詩集は、「生きてゐる陰影」「囈語」「大宣辭」「曲線」「いのり」などの短詩を収める。とりわけ「囈語」は、罪名と事物とをただ二つずつ並べただけの十四行——竊盜金魚、強盜喇叭、恐喝胡弓、賭博ねこ、詐欺更紗、姦淫林檎、傷害雲雀、殺人ちゆりつぷ、墮胎陰影、騷擾ゆき、放火まるめろ、誘拐かすてえら——からなり、意味の連関をいっさい拒んで、語そのものの手ざわりと衝突だけを提示する。「大宣辭」ではすべてを平仮名に溶かして音の連なりへと還元し、「曲線」では走る自動車の速度に詩を託す。最後に置かれた「いのり」は、空から垂れた釣針を、まぼろしの黄金の魚たちが「さみしさに/さみしさに」呑むという三行で、実験のかなたにある孤独を静かに示して閉じる。
冒頭部(原文より)
太陽は神々の蜜である 天涯は梁木である 空はその梁木にかかる蜂の巣である 輝く空氣はその蜂の卵である。 囈語 竊盜金魚 強盜喇叭 恐喝胡弓 賭博ねこ 詐欺更紗 涜職天鵞絨 姦淫林檎 傷害雲雀 殺人ちゆりつぷ
「聖三稜玻璃」山村暮鳥(青空文庫)
末尾部(原文より)
いのり つりばりぞそらよりたれつ まぼろしのこがねのうをら さみしさに さみしさに そのはりをのみ。
「聖三稜玻璃」山村暮鳥(青空文庫)
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