シャリアピン(小熊秀雄)のあらすじ・登場人物
歌手に仕えるノミのコミュニスト
- 文字数
- 4,517字
- 読了目安
- 約9分
- 表記
- 新字旧仮名
この作品について
来日した名歌手シャリアピンに仕えるノミが語り手の、風刺詩。ノミの視点で、金持ちの拍手に包まれる芸術と、労働者の耳に届かない音楽とを皮肉る。小熊秀雄の社会風刺の機知がよく表れた一篇。
あらすじ
語り手は、シャリアピンに長年仕えているノミ。ともにカザンに生まれ、ともに暮らして六十四年になる、とまず名乗る。夏は襟の下、冬は髪の中、平素は鳩尾のあたりに住み、早耳早足が取り柄で、ソビエトのことやゴーリキーの便りまで駆け回って知っているという。旦那の歌はもう聴き飽きたと言い、金持ちの拍手と、無理して入場料を払って聴きに来る人の拍手が毎度ホールに響くが、労働者の拍手は聞いたこともない、入場料が二円、四円、六円ではね、と皮肉る。自分は「蚤の仲間のコンミニスト」だから批判もできるのだ、と胸を張り、やがて主人の体が冷える日には新しい肉体に移ると語るが、もう亡命者との道連れは懲り懲りだと言って結ぶ。
冒頭部(原文より)
1 わたしはシャリアピンさまに 永年仕へてゐる蚤 ともに韃靼の古都カザンに生れ ともに暮して当年六十四歳、 夏はシャリアピンのカラーの下の涼しいところに 冬は暖い頭髪の中に 平素は主として鳩尾のあたりに住んでゐる、
「シャリアピン」小熊秀雄(青空文庫)
末尾部(原文より)
臆病でないことは 血を吸ふことに遠慮しないことと 同じだから仕方がない まもなくわが主人シャリアピンの肉体が、 しだいに冷えてくるだらう、 その日、私は新しい肉体の所有主に移転するだらう、 だがもう亡命者と道連れになることは懲々だ。
「シャリアピン」小熊秀雄(青空文庫)
名文
わたしはシャリアピンさまに 永年仕へてゐる蚤 ともに韃靼の古都カザンに生れ
小熊秀雄の詩「シャリアピン」の冒頭。名歌手シャリアピンに仕えるノミを語り手に、ユーモアと諷刺をたたえて語り出す。
原文を読む
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