紙幣(小熊秀雄)のあらすじ・登場人物
お前は右から入って左へ抜ける
- 文字数
- 4,239字
- 読了目安
- 約8分
- 表記
- 新字旧仮名
この作品について
紙幣そのものに向かって呼びかける、小熊秀雄の風刺詩。貧乏な詩人の手を素通りして出ていくお金と、札束で頬を叩かれて微笑する将軍たちを対比し、金に支配される世の中を皮肉に描く。
あらすじ
「紙幣よ、貴様のためにこの私の詩人が歌ふのを光栄と思へ」と傲然と呼びかけて始まる。紙幣は、貧乏詩人めと言い返し、イノシシ(百円札の図柄)が何かも知らないのか、とあざける。詩人の手には、図柄を見る暇もないほど、いつも右から入って左へ抜ける。ブルジョアなら一枚ずつアイロンをかけるだろうが、札束で頬を叩かれれば謹厳な将軍も笑う。詩人のところから飛び出した紙幣の斥候兵は一度も帰ってこない。終わりは、銀行のごみ箱に積もった紙幣の灰さえ、乞食の所有になることは拒まれる、という皮肉な場面。
冒頭部(原文より)
紙幣よ、 貴様のためにこの私の詩人が 歌ふのを光栄と思へ、 だが貴様はいふだらう、 ――何を生意気な貧乏詩人め、 イノシシとは一体 十円札か百円札か知つてゐるか さういはれてみると一寸胴忘れした
「紙幣」小熊秀雄(青空文庫)
末尾部(原文より)
ゴミ箱の中にやつてきたが、 ついに頭から灰は降つてこなかつた 重役はその頃おごそかに爺に言つた、 ――灰は銀行の外に出してはいかん どうも近頃灰を売るものがあるんぢや、 一切は旦那さまのものであり、 紙幣を灰にしてさへも 彼等は乞食の所有になることを拒む。
「紙幣」小熊秀雄(青空文庫)
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