福沢諭吉の名文
福沢諭吉の作品から、よく知られた一節を集めました。
13件
学問のすゝめ
「天は人の上に人を造らず人の下に人を造らず」と言えり。
近代日本の啓蒙を象徴する冒頭の一句。生まれながらの貴賤はなく、人の差は学ぶか否かにあると説く、独立自尊の宣言。
されば賢人と愚人との別は学ぶと学ばざるとによりてできるものなり。
名高い冒頭に続く一節。人の貴賤は生まれではなく学ぶか否かで決まると説き、学問を勧める本書の主旨をはっきり示す。
独立とは自分にて自分の身を支配し他によりすがる心なきを言う。
第三編で「独立」の意味を説く一文。続いて、自分で是非を判断することと、自分の働きで暮らしを立てることを挙げ、個人の自立を一国の独立へ結びつける。
わが日本国人も今より学問に志し気力を慥かにして、まず一身の独立を謀り、したがって一国の富強を致すことあらば、なんぞ西洋人の力を恐るるに足らん。道理あるものはこれに交わり、道理なきものはこれを打ち払わんのみ。一身独立して一国独立するとはこのことなり。
第三編の一節。一人ひとりが学んで自立することが国の独立につながると説き、「一身独立して一国独立す」として知られる福沢の思想の要をなす。
中津留別の書
自由とは、他人の妨をなさずして我が心のままに事を行うの義なり。
故郷中津の人々へ書き残した『中津留別の書』の一節。我儘と誤解されがちな「自由」を、他人を妨げない範囲で心のままに行うことと説く。
一身独立して一家独立し、一家独立して一国独立し、一国独立して天下も独立すべし。
一人の独立から家・国・天下の独立へと広がる連鎖を説く一文。福沢が生涯説いた独立論の骨組みがすでに見える。
福翁自伝
私は毎度この事を思出し、封建の門閥制度を憤ると共に、亡父の心事を察して独り泣くことがあります。私の為めに門閥制度は親の敵で御座る。
身分制度に縛られたまま世を去った父を思い、幼い諭吉を僧にしてでも身を立てさせようとした父の心中を察して記した一節。「門閥制度は親の敵」の一言に、福沢の生涯を貫く原動力が表れている。
女大学評論
女子の身に恥ず可きことは男子に於ても亦恥ず可き所のものなり。
福沢諭吉が『女大学』の第一条に反論した一文。女子だけを厳しく戒める教えを退け、男女に同じ基準を求める本書の立場を示す。
男女、性を異にするも其間に高低尊卑の差なし。
「男は天、女は地」とする古い教えを空論と退けた一文。根拠のない尊卑の区別を正面から否定する、福沢の論調がよく分かる。
修身要領
心身の独立を全うし、自から其身を尊重して、人たるの品位を辱めざるもの、之を独立自尊の人と云ふ。
慶応義塾の『修身要領』第二条。福沢の標語として知られる「独立自尊」とは何かを、短く定義した条文である。
男尊女卑は野蛮の陋習なり。文明の男女は同等同位、互に相敬愛して各その独立自尊を全からしむ可し。
『修身要領』第八条。男尊女卑を野蛮の陋習と断じ、男女が対等に敬い合うことを求めた条文で、明治の道徳綱領として踏み込んだ一条である。
瘠我慢の説
立国は私なり、公に非ざるなり。
福沢諭吉『瘠我慢の説』の書き出し。国を立てることは人の私情に発するものだと言い切り、そこから瘠我慢を立国の要とする論へ進む。
殺人散財は一時の禍にして、士風の維持は万世の要なり。
戦わずに江戸を明け渡した勝海舟らの講和を論じた一文。兵禍を避けた功と士風を損ねた罪を天秤にかける、本書の論点が凝縮されている。