後朝とは

分類
その他
読み
きぬぎぬ

男女が共寝をした翌朝の別れ。また、その朝。「衣衣」とも書く。平安時代の貴族は着ていた衣を掛けて寝ており、重ねていた互いの衣をそれぞれ身につけて別れることから、この名があるとされる。男が女のもとへ通う結婚の形が一般的だった平安時代には、男は夜が明けきらないうちに女の家を去り、帰ってから女に手紙と歌を贈った。これを後朝の文(後朝の歌)といい、女も歌を返した。『古今和歌集』恋三の「しののめのほがらほがらと明けゆけばおのがきぬぎぬなるぞ悲しき」は、夜明けとともに互いの衣に分かれてゆく別れのつらさを詠んでいる。小倉百人一首では、藤原義孝の「君がため惜しからざりし命さへ長くもがなと思ひけるかな」が、詞書に「女のもとより帰りてつかはしける」とある後朝の歌で、逢う前は惜しくなかった命が、逢ったあとでは長くあってほしいと思われる心の変化を詠む。藤原道信の「明けぬれば暮るるものとは知りながらなほ恨めしき朝ぼらけかな」も、女のもとから帰って贈った歌である。『枕草子』には、明け方に女のもとから帰る男のふるまいの良しあしを描いた段があり、王朝の物語や日記でも、後朝の別れと文のやりとりは恋の行方を映す場面として描かれる。漢語として「こうちょう」とも読む。

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