贈答歌とは
- 分類
- 形式・ジャンル
- 読み
- ぞうとうか
二人の人が、互いに思いを述べてやりとりする和歌。多くは男女の間で交わされ、先に贈る歌を贈歌、それに答える歌を返歌(返し)という。『万葉集』の相聞にも早い姿が見られ、平安時代の宮廷社会では、恋の申し込みから逢瀬のあとの便り、季節の挨拶、人の死を悼む弔問に至るまで、和歌のやりとりが手紙の役目を果たした。歌の内容だけでなく、紙の色や結び付ける草花など、贈り方にも心が配られた。返歌は相手の歌の言葉や趣向を受け止めたうえで、それをずらしたり切り返したりして詠まれることが多く、即座に気の利いた返しができることは教養の証とされた。小倉百人一首の清少納言「夜をこめて鳥のそら音ははかるとも」は、藤原行成とのやりとりのなかで中国の故事を踏まえて切り返した歌で、その経緯は『枕草子』にも記されている。祐子内親王家紀伊の「音に聞く高師の浜のあだ波は」も、艶書合で藤原俊忠から贈られた歌に答え、求愛を技巧でかわした返歌である。贈答歌は物語や日記の骨組みともなった。『伊勢物語』などの歌物語は贈答をめぐる短い話を連ね、『蜻蛉日記』『和泉式部日記』は作者と相手との歌のやりとりを軸に心の動きをたどる。『源氏物語』に詠まれた約八百首の和歌も、その多くが人物どうしの贈答の歌である。