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蜻蛉日記(藤原道綱母)のあらすじ・登場人物

あるかなきかの心ちするかげろふ

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  • 家族
  • 古典

藤原道綱母 

文字数
85,528字
読了目安
約2時間51分
表記
新字旧仮名
種別
随筆
舞台
  • 京都府
  • 滋賀県
  • 奈良県

この作品について

平安時代の中期、藤原道綱母が、のちに摂政・関白となる藤原兼家と結ばれた天暦8年(954年)から、天延2年(974年)の大晦日までのおよそ二十一年を、上・中・下の三巻につづった日記。成立は天延2年以後とみられる。世間の物語は絵空事ばかりだから、人並みでもない自分の身の上をありのままに書いてみようという序に始まり、幾人もの妻を持つ夫の訪れを待ちわびる嘆きや嫉妬、一人息子の道綱への愛情、物詣での旅で見つめた自らの心を、多くの和歌とともに書きとめる。女性がみずからの半生と内面を記した最初の日記文学とされ、のちの「和泉式部日記」「紫式部日記」「更級日記」へ続く女流日記の道を開いた。書名は上巻の結び「あるかなきかの心ちするかげろふのにきといふべし」による。本書は国文大観(丸岡桂・松下大三郎 共編、板倉屋書房、1906年)による原文で、国立国会図書館が公開する底本の画像とOCRテキストを照らし合わせて校正し、収録した。

あらすじ

上巻。天暦8年、右兵衛佐の藤原兼家から、仲立ちも通さず馬に乗った使いで歌が届き、求婚が始まる。やがて結ばれた作者は、翌年に男の子の道綱を産み、陸奥守となって任地へ下る父を涙で見送る。しかし兼家にはすでに時姫という妻があり、まもなく作者は文箱の中に別の女へ宛てた手紙を見つける。兼家は町の小路に住む女のもとへ通うようになり、門をたたかれても開けなかった翌朝、作者は「歎きつゝ一人ぬる夜の明くるまはいかに久しきものとかは知る」の歌を、色の変わった菊に挿して贈る。町の小路の女は子を産むが、じきに兼家の心は離れ、子も亡くなって、作者はひそかに胸のすく思いをする。母の死、兼家の病、初瀬への物詣でなどを経て、上巻は、思うにまかせない身の上を「あるかなきかの心ちするかげろふのにき」と呼んで結ばれる。中巻。安和の変で西の宮の左大臣源高明が流されると、作者はその北の方を思いやって長歌を贈る。兼家の訪れはいよいよ間遠になり、作者は唐崎での祓え、石山寺への参籠と、物詣でに心を慰める。兼家が近江という新しい女のもとへ通っていると知った作者は、夏、西山の鳴滝の寺に籠もって世を捨てることまで考える。兼家や道綱、周りの人々の説得にもなかなか応じなかったが、ついには兼家に連れ戻され、世間から「あまがへる」とあだ名される。下巻。作者は、兼家がかつて通った女が産んだ娘を探し出して引き取り、養女として育てる。道綱も大和の女に歌を贈るような年ごろになる。兼家の弟の右馬頭が養女に熱心に求婚し、兼家の許しも得て話が進みかけるが、やがて立ち消えになる。作者は中川のほとりへ移り住み、兼家との仲はいっそう遠のいていく。日記は天延2年の大晦日、夜が更けて戸をたたく音が聞こえてくるところで終わる。

登場人物

冒頭部(原文より)

かくありし時過ぎて世の中にいとものはかなく、とにもかくにもつかで世に経る人ありけり。かたちとても人にも似ずこたましひもあるにもあらで、かうものゝやうにもあらであるもことはりと思ひつゝ唯臥し起き明し暮すまゝに、世の中におほかたふる物語のはしなどを見れば世に多かるそらごとだにあり。人にもあらぬ身の上までうき日記して珍しきさまにもありなむ。

「蜻蛉日記」藤原道綱母(青空文庫)

末尾部(原文より)

今年いたうあるゝとなくて、はだら雪ふたゝびばかりぞ降りつる。佐の朔日のものものども白馬にものすべきなどものしつるほどに、暮れはつる日にはなりにけり。明日のものをりまかせつゝ、人にまかせなどして思へば、かうながらこひけふになりにけるもあさましう、みたまなど見るにも、例の尽きせぬことにおぼゝれてぞはてにける。年のはてなれば、夜いたう更けてぞたゝきくなる。

「蜻蛉日記」藤原道綱母(青空文庫)

名文

かくありし時過ぎて世の中にいとものはかなく、とにもかくにもつかで世に経る人ありけり。

日本初の女流日記文学の書き出し。理想の結婚とは遠い自分の半生を「世に経る人」と突き放して語り、身の上を書き残す動機をうち明ける。

原文を読む

原文はアプリに収録しています(縦書きで読めます)。底本:丸岡桂・松下大三郎 共編「國文大觀 日記草子部」(板倉屋書房、1906年)所収の「蜻蛉日記」。国立国会図書館デジタルコレクションで公開されている底本の画像と、同館「次世代デジタルライブラリー」のOCRテキスト(パブリック・ドメイン)をもとに、画像と照らし合わせて校正し、蜻蛉日記の本文だけを収録した(巻末に後人が付け加えた家集と、本文の脇の異本の注記は省き、年の区切りの記号は段落の改めに置き換え、変体仮名は通行の仮名に改めた)。旧字は新字に改めた(仮名遣いは底本のまま)。

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