日記文学とは

分類
形式・ジャンル
読み
にっきぶんがく

日々の出来事や心の動きを日を追って記すという形式に、文学としての表現を託した作品。日本では平安時代の宮廷でかな文字とともに発達し、紀貫之が女性に仮託して土佐からの帰京の旅をつづった『土佐日記』(承平5年〔935年〕ごろ)がその出発点とされる。以後、藤原道綱母『蜻蛉日記』や、和泉式部・紫式部・菅原孝標女ら宮廷の女性たちが自らの半生や恋、宮仕えの日々を繊細な筆で記した女流日記が相次ぎ、王朝文学の一領域を築いた。鎌倉時代には、阿仏尼が所領の訴訟のために鎌倉へ下った旅を記した『十六夜日記』のように、紀行の性格を強めた日記も書かれた。近代に入ると、事実をありのままに記す日記の形式は、作家の内面をじかに映す器として再び注目される。永井荷風が四十年余りにわたって書き継いだ『断腸亭日乗』は文学的な日記の白眉であり、堀辰雄は『蜻蛉日記』を現代の小説として語り直した『かげろふの日記』を、谷崎潤一郎は老人の妄執を日記の形で描いた『瘋癲老人日記』を残すなど、古典の日記文学は近代の作家たちにも豊かな霊感を与え続けている。

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