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更級日記(菅原孝標女)のあらすじ・登場人物

物語にあこがれた少女

  • 青春
  • 家族
  • 古典

菅原孝標女 

文字数
26,307字
読了目安
約53分
表記
新字旧仮名
種別
随筆
舞台
  • 千葉県
  • 静岡県
  • 京都府
  • 奈良県
  • 滋賀県

この作品について

平安時代中期、菅原孝標女が、少女のころから五十歳頃までの半生をふり返ってつづった日記。東国の上総国で育った作者は、都にあるという物語を読みたい一心で育ち、十三歳の秋、父の任期が終わって京へ上る。三か月の旅の見聞に始まり、伯母から贈られた「源氏物語」を昼も夜も読みふけった日々、姉や乳母との別れ、宮仕え、結婚、夫との死別、そして晩年の信仰へと、物語にあこがれた少女がひとりの女の人生を見つめ直していく。成立は康平3年(1060年)頃以後とされる。書名は、作者が「月も出でてやみにくれたる姨捨になにとてこよひたづね来つらむ」と詠んだ歌(姨捨山のある信濃国更級)にちなむ。本書は国文大観(丸岡桂・松下大三郎 共編、板倉屋書房、1906年)による原文で、国立国会図書館が公開する底本の画像とOCRテキストを照らし合わせて校正し、収録した。

あらすじ

東国の上総国で育った作者は、京にあるという物語を読みたいと願い、等身の薬師仏を作って「京にとく上げ給ひて物語の多く候ふなる、あるかぎり見せ給へ」と祈る。十三歳の年、父の任期が終わり、九月三日に上総を発って京へ向かう。富士山や足柄山、竹芝寺の伝説、隅田川など、東海道の旅の見聞が語られる。京に着くと、母の親族から物語を贈られ、とくに伯母から「源氏物語」を手に入れた喜びに、昼夜を忘れて読みふける。その後、姉の死、乳母の死、飼っていた猫の不思議な夢など、身辺のできごとが続き、夢のお告げに従わず物語に耽ったことを、のちに作者は悔やみ返す。やがて宮仕えに出たのち、結婚して家庭を持ち、初瀬や石山、鞍馬など各地の寺社に詣でるが、夫に先立たれて孤独な日々を送る。夢に阿弥陀仏が庭に立つ姿を見たことなどを書きとめ、甥や尼と歌を贈答するところで日記は終わる。

登場人物

冒頭部(原文より)

あづまぢの道のはてよりもなほ奥つかたに生ひ出でたる人、いかばかりかはあやしかりけむを、いかに思ひ始めけることにか、世の中に物語といふものゝあんなるをいかで見ばやと思ひつゝ、つれづれなるひるまよひゐなどに、姉継母などやうの人々の、その物語かの物語、光源氏のあるやうなどところどころ語るを聞くに、いとゞゆかしさまされど、我が思ふまゝにそらにいかでか覚え語らむ。いみじく心もとなきまゝに等身に薬師仏を作りて、手洗ひなどしてひとまにみそかに入りつゝ、「京に疾くのぼせ給ひて物語の多く候ふなるある限見せ給へ」と身を捨てゝ額をつきいのり申すほどに、十三になる年のぼらむとて九月三日門出して今たちといふ所にうつる。

「更級日記」菅原孝標女(青空文庫)

末尾部(原文より)

人々は皆ほかにすみあかれて、故里にひとりいみじう心ぼそくかなしくて、ながめあかしわびて久しうおとづれぬ人に、「茂りゆくよもきが露にそぼちつゝ人にとはれぬねをのみぞなく」。尼なる人なり、「世のつねの宿のよもぎにおもひやれそむきはてたる庭のくさむら」。

「更級日記」菅原孝標女(青空文庫)

名文

あづまぢの道のはてよりもなほ奥つかたに生ひ出でたる人、いかばかりかはあやしかりけむを、いかに思ひ始めけることにか、世の中に物語といふものゝあんなるをいかで見ばやと思ひつゝ、つれづれなるひるまよひゐなどに、姉継母などやうの人々の、その物語かの物語、光源氏のあるやうなどところどころ語るを聞くに、いとゞゆかしさまされど、我が思ふまゝにそらにいかでか覚え語らむ。

作者が東国の果て上総に育った少女時代、物語を読みたいと願った回想。やがて『源氏物語』に耽る文学少女の原点となった書き出し。

原文を読む

原文はアプリに収録しています(縦書きで読めます)。底本:丸岡桂・松下大三郎 共編「國文大觀 日記草子部」(板倉屋書房、1906年)所収の「更科日記(更級日記)」。国立国会図書館デジタルコレクションで公開されている底本の画像と、同館「次世代デジタルライブラリー」のOCRテキスト(パブリック・ドメイン)をもとに、画像と照らし合わせて校正し、更級日記の本文だけを収録した(本文の脇の異本の注記・傍注は省き、変体仮名は通行の仮名に改めた)。旧字は新字に改めた(仮名遣いは底本のまま)。

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