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本朝二十不孝(井原西鶴)のあらすじ・登場人物

諸国に二十人、親不孝の末路

  • 家族
  • 社会
  • 古典

井原西鶴 1686年11月

文字数
33,923字
読了目安
約1時間8分
表記
新字旧仮名
種別
小説
舞台
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この作品について

井原西鶴の浮世草子。1686年(貞享3年)11月、大坂・江戸の書肆から刊行された。五巻二十話。序に「諸国見聞するに、不孝の輩眼前に其の罪を顕はす。是れを梓にちりばめ、孝に勧むる一助ならんかし」とあるとおり、京・大坂から駿河、鎌倉、宇都宮、土佐、長崎、松前まで、諸国の親不孝者の末路を一話ずつ書き並べた。親に借りを返させようと寿命を縮める祈りをかける道楽息子、盗賊の頭になって親子ともども釜煎りにされる五右衛門、遊興や博奕や相撲や酒に溺れて親を顧みない息子たちなど、どの話も不孝の報いが容赦なく降りかかる。一方で、嫁の孝行に感じ入った掛け取りが銭を置いて帰る話や、貧しい浪人の親子を見捨てなかった行商人が思わぬ幸運をつかむ話のように、孝の側に回る人々の話も混じる。西鶴は教訓を掲げながら、人の欲や見栄をさめた目で描き、ときに異様なおかしみさえにじませている。本書は「近代日本文学大系」第3巻(国民図書、1927年)による原文で、国立国会図書館が公開する底本の画像とOCRテキストを照らし合わせて起こし、収録した。

あらすじ

【巻一】京の借次屋で、親が死ねば倍返しという千両の借金をした息子は、親の死を祈り、毒薬を盛ろうとして自分がその毒を飲んで死ぬ(今の都も世は借物)。伏見の竹帚屋の長男は、幼い妹を殺し、母を蹴って腰を抜かし、島原に身を売った妹の金を盗んで逃げる。両親は野原で自害し、長男は宇治で親の亡骸を食った狼に襲われる(大節季に無い袖の雨)。加賀の絹問屋の美しい娘は、嫁ぎ先を次々に嫌って十八度離縁され、親が死ぬと下男と所帯を持ち、野に倒れる(跡の剝げたる嫁入長持)。大坂の裕福な塩屋の跡取りは、点取りの題を考えるうちに世を厭い、縁談の決まっていた家を捨てて出家する。両親は子を待ちわびて亡くなり、家は絶える(慰み改へて話の点取)。【巻二】近江の矢橋の渡しの老船頭は、盗賊石川五右衛門の父だと語る。五右衛門は都に夜盗の学校を開き、七条河原で子とともに釜に煮られた(我と身を焦す釜が淵)。熊野の山里の幼い娘が、旅の僧の金を奪うよう親にそそのかす。のちにその娘は色事から奥方を殺して逃げ、七年目の命日に処刑される父のあとを追うように名乗り出て討たれる(旅行の暮の僧にて候)。伊勢鳥羽の釣針鍛冶の子藤助は、親の反対を押して江戸廻船に乗り、嵐で異国に流されて人油を絞られる(人は知れぬ国の土仏)。駿河の虎屋善右衛門は死ぬ前に、実は二千両しかない遺産を八千両と書き置く。弟三人が兄に支払いを迫り、兄は自害する。兄の亡霊に導かれた兄嫁が三人の弟を討ち、自らも死ぬ(親子五人仍つて書置如件)。【巻三】吉野の晒葛屋の四人の娘は出産でつぎつぎ死に、末の乙女は山賊の夫と実家を襲って淵に身を投げる(娘盛りの散桜)。堺の八五郎は歌留多の賭けに溺れて家屋敷を失い、両親が自殺したのち、墓へ急ぐ途中で盗賊に襲われる(先斗に置いて来た男)。宇都宮の漆屋武太夫は淵から固まった漆を拾って富み、子を連れて竜の細工を沈めた淵に入って二人とも命を落とす(心を呑まるゝ蛇の形)。鎌倉の宿屋の娘が名所案内の男と夫婦になり、生まれた子が五歳で、かつて男が殺した油売りの子だと語り出す。男は妻を刺して自害し、子は行方知れずになる(当社の案内申すほどをかし)。【巻四】広島の遊女狂いの二人、甚七と源七は親を捨てて備前へ行き、老人を連れて物乞いをする。孝を尽くした源七は老人の素性が知れて取り立てられ、甚七は播磨で息絶える(善悪の二つ車)。土佐の鰹屋の嫁は、姑を嫉んで書き置きを残して家出し、姑は絶食して死ぬ。のちに母の筆が見つかり、夫婦は刺し違えて果てる(枕に残す筆の先)。敦賀の榎本万左衛門の子万太郎は、継母に偽りの罪を着せて父に離縁させ、のちに雷に打たれる(木陰の袖口)。松前の浪人の弟八弥は、母の幽霊に化けた狸を射て賞されそうになるが、親の姿に弓を引いたとして国を追われる(ほんに其の人の面影)。【巻五】福岡の船乗りの後家と嫁。盆前の掛け取りの日、嫁は自分の櫛や笄を質に入れて姑を養い、これに感じた掛け取りは銭を置いて帰る。兄の長八は母に逆らう不孝な妹を家から追い出し、その夫には別の娘を迎えて夫婦にさせる(胸こそ躍れ此の盆前)。長崎の酒豪八人の猩々講に加わった団兵衛は、母の意見にも耳を貸さず、母の死に目にも枕を上げない(八人の猩々講)。高松の両替商の跡取りは相撲に熱中し、強力の百姓に投げられて胴骨を砕かれる(無用の力自慢)。奈良の刀屋の勘当息子徳三郎は、江戸で大根売りをするうち、貧しい浪人の親子に出会い、その死に際を看取る。やがて子の実父が迎えに来て、徳三郎は百両をもらい、のちに江戸で栄える(故き都を立ち出でて雨)。

登場人物

冒頭部(原文より)

雪中の笋八百屋にあり。鯉魚は魚屋の生船にあり。世に天性の外祈らずとも、先々の家業をなし、禄を以て万物を調へ、教へを尽せる人常なり。この常の人稀にして悪人多し。

「本朝二十不孝」井原西鶴(青空文庫)

末尾部(原文より)

其の後徳三郎は通町に店出して、商ひの道広く程なく分限になりて、南都より二人の親を迎へ、朝夕孝行を尽し人の為となり、慈悲善根をして直なる世を渡りて、日本橋のほとりに角屋敷次第に家栄え、昔の奈良刀、今金づくりにして箱に納め、永代松の梁を鳴らさず、此の御時江戸に安住してなほ悦びを重ねける。

「本朝二十不孝」井原西鶴(青空文庫)

原文を読む

原文はアプリに収録しています(縦書きで読めます)。底本:「近代日本文学大系」第3巻 井原西鶴集(国民図書、1927年)所収の「本朝二十不孝」。国立国会図書館デジタルコレクションで公開されている底本の画像と、同館「次世代デジタルライブラリー」のOCRテキスト(パブリック・ドメイン)をもとに、画像と照らし合わせて起こし、本文だけを収録した(各巻の目録・章題の脇の副題・ルビ・挿絵・巻末の刊記は省いた)。旧字は新字に改めた(仮名遣いは底本のまま)。

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