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日本永代蔵(井原西鶴)のあらすじ・登場人物

金銀が町人の氏系図になる

  • 社会
  • 風刺
  • 古典

井原西鶴 1688年1月

文字数
55,437字
読了目安
約1時間51分
表記
新字旧仮名
種別
小説
舞台
  • 山形県
  • 東京都
  • 福井県
  • 静岡県
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  • 長崎県

この作品について

井原西鶴の浮世草子。1688年(貞享5年)正月、大坂などで刊行された。副題は「大福新長者教」。町人がどのようにして富を築き、どのようにして失ったかを、六巻三十章の短い話に仕立てた、西鶴の町人物の代表作である。水間寺の観音に借りた一貫文を元手にした舟問屋、拾い米から両替商に成り上がった老女の子、現金掛け値なしの商いで呉服の新しい店を開いた三井九郎右衛門など、立身した人々の手口を語る一方、親の貯めた財産を遊興で使い果たす二代目や、見栄と贅沢で身を滅ぼす商人も数多く描く。どの章も、朝夕の算用と始末、家業への精励が長者になる道だと説くが、その筆は説教に偏らず、人の欲と才覚を冷静に、ときにおかしみをもって見つめている。元禄の町人社会の金銭感覚を知る手がかりとして、いまも広く読まれている。本書は「近代日本文学大系」第3巻(国民図書、1927年)による原文で、国立国会図書館が公開する底本の画像とOCRテキストを照らし合わせて起こし、収録した。

あらすじ

【巻一】水間寺の観音に参った男が借りた一貫文を元手に、江戸で舟問屋を営んで栄え、十三年で元の一貫が八千百九十二貫に積み上がる(初午は乗りて来る仕合)。京の始末家は一代で二千貫目を貯めて八十八歳で世を去るが、跡を継いだ息子は拾った艶書の金をきっかけに遊びを覚え、家は傾く(二代目に破る扇の風)。大坂北浜の米市の繁栄を語り、こぼれ米を掃き集めた老女の子が銭店から両替商となり、大名の掛屋にまで出世する(浪風静かに神通丸)。掛け売りに苦しむ江戸の呉服屋をよそに、三井九郎右衛門は駿河町に現銀売り・掛け値なしの店を開き、品物ごとに手代を分けて大いに繁盛する(昔は掛算今は当座銀)。借金を抱えた松屋の後家は、家を一人四匁の入札にして売り、当たったのは下女で、後家は借銀を払ってふたたび分限になる(世は慾の入札に仕合)。【巻二】借屋住まいで千貫目を持つ藤市の暮らしぶりと、娘への長者の教育(世界の借屋大将)。大津の醤油屋と、貧富の入り交じる町の人々(怪我の冬神鳴)。道楽が過ぎて勘当された大黒屋の息子新六が、手拭いの切り売りから身を起こし、笠大黒屋の主となる(才覚を笠に著る大黒)。紀州太地の鯨突きの名人天狗源内と、夢のお告げの鯛の生かし方(天狗は家名の風車)。出羽酒田の廻船問屋鐙屋の大きな商いと内証(舟人馬かた鐙屋の庭)。【巻三】長者になる薬の処方と、長者になった男の最期(煎じやう常とは変る問薬)。豊後の富商の息子が京の水を取り寄せて風呂を焚かせ、身を滅ぼす(国に移して風呂釜の大臣)。寺の戸帳を譲り受けて茶入の袋や表具の裂に売り、一時は栄えたが長続きしない京の商人(世は抜取の観音の眼)。借りた銀を済ませ、高野山に借銭塚を建てた商人(高野山借銭塚の施主)。駿河の呉服屋忠助の没落と、娘の器量による思いがけない幸運(紙子身代の破れ時)。【巻四】貧乏神を祭って働き通し、七十五人を使う長者になった染物屋(祈るしるしの神の折敷)。長崎で遊女の屏風を手に入れ、ふたたび大商人となる男(心を畳み込む古筆屏風)。伊勢の蒔銭と、江戸の商人の盛衰(仕合の種を蒔銭)。敦賀の荷茶屋の利助と化物屋敷(茶の十徳も一度に皆)。正月の仕舞いと、堺の町人の気前(伊勢海老の高買)。【巻五】三代がかりで仕上げた時計細工が算用に合わない話、元手を得て大分限になった人々の例(廻り遠きは時計細工)。掛け取りの心得と、掛け売りで潰れた米屋(世渡りには淀鯉のはたらき)。節分の豆一粒を育てて豆灯籠を残した百姓と、借銀ばかりの書置を残した男(大豆一粒の光堂)。常陸の長者が、芸事に身を持ち崩した子どもたちを戒める(朝の塩籠夕の油桶)。大晦日の算用に追われる商人の浮き沈み(三匁五分曙のかね)。【巻六】味噌屋が蓮の葉で味噌を包んで栄えるが、親の築いた身代を息子が六年で潰す(銀のなる木は門口の柊)。諸芸に通じても身過ぎの算用を知らぬ養子の苦労(見立てて養子が利発)。堺の小刀屋が毎年書き置きを増やし、子の病を治した医者に薬代を惜しまない(買置は世の心やすい時)。淀の与三右衛門が川を流れてきた漆の塊で身代を固め、のちに家は絶える(身代かたまる淀川のうるし)。北山の三夫婦の升掻と、金銀の物語を「日本大福帳」に記して巻を閉じる(智慧をはかる八十八の升搔)。

登場人物

冒頭部(原文より)

天道言はずして国土に恵みふかし、人は実あつて偽りおほし。其の心は本虚にして物に応じて跡なし。是れ善悪の中に立つて直なる今の御代を、ゆたかにわたるは人の人たるが故に、常の人にはあらず。

「日本永代蔵」井原西鶴(青空文庫)

末尾部(原文より)

金銀有る所には有る物語聞き伝へて日本大福帳にしるし、末久しく是れを見る人の為にもなりぬべしと、永代蔵にをさまる時津御国静かなり。

「日本永代蔵」井原西鶴(青空文庫)

名文

始末大明神の御託宣にまかせ金銀を溜むべし。是れ二親の外に命の親なり。

町人の暮らしの指針を語る巻頭。始末(倹約)を神にたとえ、金銀を溜めることを命の親とまで言い切る、西鶴の町人物の書き出し。

天地は万物の逆旅、光陰は百代の過客、浮世は夢幻。

李白の詩文を引いた、人生を旅にたとえる一節。この世は束の間と断ったうえで、だからこそ金銀の力を説く、浮世草子らしい皮肉。

原文を読む

原文はアプリに収録しています(縦書きで読めます)。底本:「近代日本文学大系」第3巻 井原西鶴集(国民図書、1927年)所収の「日本永代蔵」。国立国会図書館デジタルコレクションで公開されている底本の画像と、同館「次世代デジタルライブラリー」のOCRテキスト(パブリック・ドメイン)をもとに、画像と照らし合わせて起こし、本文だけを収録した(各巻の目録・章題の脇の副題・ルビ・挿絵・巻末の刊記は省いた)。旧字は新字に改めた(仮名遣いは底本のまま)。

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