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好色一代男(井原西鶴)のあらすじ・登場人物

たはぶれし女三千七百四十二人

  • 恋愛
  • 古典

井原西鶴 1682年10月

文字数
71,961字
読了目安
約2時間24分
表記
新字旧仮名
種別
小説
舞台
  • 東京都
  • 京都府
  • 大阪府
  • 兵庫県

この作品について

井原西鶴の最初の浮世草子。1682年(天和2年)10月、大坂で刊行された。色道に生きる男・世之介の七歳から六十歳までを、一年に一章ずつ、全八巻五十四章でたどる。前半は、早熟な少年が勘当されて諸国を流れ歩きながら、身分を問わずさまざまな女たちと交わる遍歴の物語。後半は、父の死で莫大な遺産を継いだ世之介が大尽となり、京の島原・大坂の新町・江戸の吉原で、吉野・夕霧・高尾といった名高い太夫たちと交わる遊里の物語となる。「源氏物語」を下敷きにした構成と、俳諧で鍛えた簡潔で飛躍の多い文体で、当世の人間と風俗をありのままに写し、それまでの教訓的な仮名草子とは一線を画して、浮世草子という新しい分野を開いた。本書は「近代日本文学大系」第3巻(国民図書、1927年)による原文で、国立国会図書館が公開する底本の画像とOCRテキストを照らし合わせて起こし、収録した。各章の見出しには、目録に記された世之介の年齢を添えた。底本の伏字(○)はそのまま残している。

あらすじ

但馬の銀山の里に住み、色道ひとすじで夢介とあだ名された男が、京の名高い遊女を身請けして、そのあいだに世之介が生まれる。七歳の夏の夜、手燭をかざして廁へ案内する腰元に「その火を消して近くへ」と言い、恋は闇ということを知らないのかと言ってのけたのが、世之介の恋のはじまりだった。以後、年ごとに一章ずつ、その色の遍歴がつづられる。少年のうちから恋文を書き、腰元や湯女、茶屋の女と関わりを重ねた世之介は、江戸でも遊び歩いて十九歳で親から勘当され、谷中の草庵で出家させられるが、道心は数日と続かない。謡うたいとなって諸国を流れ歩き、各地の港や宿場の遊女、村の娘、旅先で出会った女たちと、身分を問わず交わっていく。三十四歳のとき、女たちを乗せて沖へ出した舟が嵐に遭い、ひとり浜に打ち上げられた世之介は、父が亡くなったことを知らされる。京へ戻ると、母から「心のままにこの銀を使え」と二万五千貫目の財産を渡され、名高い女郎を残らず買おうと、大尽として遊里に乗り出す。三十五歳の年には、島原の名妓吉野太夫を身請けして妻に迎え、反対する一門の女たちを吉野が自らもてなしてうち解けさせる。それからは京の島原、大坂の新町、江戸の吉原をはじめ各地の遊里で、夕霧、高尾、三笠といった太夫たちとの交わりが語られる。五十四歳までに戯れた女は三千七百四十二人、少年は七百二十五人と手日記に記すほどになった世之介は、六十歳の年、もはや見残した遊女もいないと、気の合う友七人を誘って新しい舟を造らせ、好色丸と名づける。女ばかりが住むという女護の島を目指して、天和二年の神無月の末、伊豆の国から船出した世之介たちは、そのまま行方知れずとなった。

登場人物

冒頭部(原文より)

桜もちるに歎き、月は限りありて入佐山、爰に但馬国かねほる里の辺に、浮世の事を外になして、色道二つに、寝ても覚めても夢介とかへ名よばれて、名古屋三左、加賀の八などと、七つ紋のひしにくみして、身は酒にひたし、一条通り、夜更けて戻り橋、或時は若衆出立、姿をかへて墨染の長袖、又はたて髪かつら、化物が通るとは誠にこれぞかし。それも彦七が顔して、願はくは嚙殺されてもと通へば、なほ見捨て難くて、その頃名高き中にも、かづらき、かをる、三夕、思ひ/\に身請して嵯峨に引込み、或は東山の片陰、又は藤の森、窃かにすみなして、契り重なりて、此のうちの腹より、生まれて世之介と名によぶ。あらはに書きしるすまでもなし、知る人は知るぞかし。

「好色一代男」井原西鶴(青空文庫)

末尾部(原文より)

「されば浮世の遊君、白拍子、戯女見残せし事もなし。我をはじめて此の男ども心に懸る山もなければ、是れより女護の島にわたりて抓み取りの女を見せん。」といへば、いづれも歓び、「譬へば腎虚してそこの土となるべき事、たま/\一代男に生まれてのそれこそ願ひの道なれ。」と、恋風にまかせ、伊豆国より日和見すまし、天和二年神無月の末に行方知れずなりにけり。

「好色一代男」井原西鶴(青空文庫)

名文

「恋は闇といふ事を知らずや。」

井原西鶴『好色一代男』巻一、幼い世之介が灯を消すよう求めて言う言葉。早熟な主人公の色の道の始まりを告げる名文句。

五十四歳まで、たはぶれし女三千七百四十二人、少人のもてあそび七百二十五人手日記にしる。

世之介の生涯の色事を数字で示した一節。たわむれた女三千七百四十二人という途方もない数が、西鶴らしい誇張と諧謔を伝える。

原文を読む

原文はアプリに収録しています(縦書きで読めます)。底本:「近代日本文学大系」第3巻 井原西鶴集(国民図書、1927年)所収の「好色一代男」。国立国会図書館デジタルコレクションで公開されている底本の画像と、同館「次世代デジタルライブラリー」のOCRテキスト(パブリック・ドメイン)をもとに、画像と照らし合わせて起こし、本文だけを収録した(各巻の目録・章題の脇の副題・ルビ・挿絵は省いた。章見出しに添えた世之介の年齢は目録による。底本の伏字はそのまま残した)。旧字は新字に改めた(仮名遣いは底本のまま)。

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