心中重井筒(近松門左衛門)のあらすじ・登場人物
借りた銀が、死出の旅になる
- 恋愛
- 古典
- 文字数
- 14,539字
- 読了目安
- 約29分
- 表記
- 新字旧仮名
- 舞台
- 大阪府
この作品について
近松門左衛門の人形浄瑠璃。1707年(宝永4年)に大坂・竹本座で初演されたとされる世話物で、上・中・下の三巻から成る。大坂の紺屋(染物屋)の入婿・徳兵衛が、南の茶屋「重井筒屋」の遊女・お房との恋のために、妻のお辰を欺き、最後は心中へ追いつめられていく。上之巻は師走の紺屋の店先を舞台にした、にぎやかな喜劇の調子で進む。徳兵衛は、妻の判を使って銀四百目を借り、それが露見しかけると、妻の不貞をでっち上げて話をそらし、「もう房とは別れる」と誓って丸く収めてみせる。中之巻では、徳兵衛が房に会いに来たところを茶屋の主人である兄に引き止められ、火燵に隠した房が、足された炭火の熱さに耐えながら、二人は死ぬ覚悟を固める。下之巻は大坂の町から生玉へ向かう道行で、妻のお辰や子の小市郎に追われながら、二人は日蓮の題目を唱えて最期を迎える。近松の世話物のなかでは「曾根崎心中」「冥途の飛脚」「心中天網島」ほど上演されない作品だが、前半の喜劇と後半の悲劇を一つの狂言に収めたつくりに特色がある。本書は「近代日本文学大系」第6巻(国民図書、1927年)による原文で、国立国会図書館が公開する底本の画像とOCRテキストを照らし合わせて起こし、収録した。
あらすじ
【上之巻】師走の十五日、大坂の紺屋では、女房のお辰が出かけた留守に、入婿の徳兵衛が丁稚の三太に口止めをして、頼んだ別の女を「お内儀様」に仕立てる。堀江の口入の治右衛門から、夫婦の判を押した手形で銀四百目を借りるためである。そこへお辰の父で、槍屋町に住む隠居の宗徳がやって来て、治右衛門から銀の話を聞いたと怒り出す。帰ってきたお辰は、兄に貸す銀の判を押したのだと夫をかばう。徳兵衛は門口で様子を聞いていて飛び込み、女房が密夫を引き入れたと言いがかりをつけて奥へ踏み込むが、引きずり出したのは坊主頭の息子・小市郎だった。徳兵衛は、借りた銀を見せ、今日の女は金で頼んだ他人だと打ち明けて、房とは縁を切ると誓い、お辰を喜ばせる。【中之巻】お辰に頼まれて隠居のもとへ向かった徳兵衛は、道の途中で房を忘れていたことに気づく。茶屋「重井筒屋」では、徳兵衛の兄である主人が、徳兵衛を座敷に引き止めて、火燵に炭火をどんどん足させる。その火燵の中には房が隠れていて、熱さをこらえながら徳兵衛の裾にすがる。房は、京の父の借銀のために、明日までに銀が要る身だった。二人は、ここまで来たからには死ぬほかないと思い定める。【下之巻】二人は屋根伝いに茶屋を抜け出し、樽屋町を経て生玉へ向かう。お辰は、子の小市郎と丁稚の三太を連れて追ってきて、自分のせいで二人が死ぬのだと言って自害しようとするが、止められる。房と徳兵衛は、宗旨を日蓮の法華にそろえて題目を唱え、徳兵衛は房を刺す。追手を避けて房の亡骸を探すうち、徳兵衛は畠の埋もれ井戸に落ち、引き上げられて、「重井筒の心中」として幕を閉じる。
登場人物
- 徳兵衛 大坂の紺屋(染物屋)の入婿。南の茶屋「重井筒屋」の遊女・房と深い仲になる
- 房 重井筒屋の遊女。京の父の借銀のために銀を必要としている
- お辰 徳兵衛の妻。夫をかばい、のちに二人を追う
- 宗徳 お辰の父で、槍屋町に住む隠居。徳兵衛の借銀を知って怒る
- 小市郎 徳兵衛とお辰の幼い子
- 三太 紺屋の年季奉公の丁稚
- 治右衛門 堀江の口入屋。徳兵衛に銀四百目を貸す
- 兄 重井筒屋の主人で徳兵衛の兄。徳兵衛を引き止めて火燵に炭火を足させる
冒頭部(原文より)
夜さ来いといふ字を金紗で縫はせ、裾に清十郎とねた処、裾に清十郎とねずみ色。京の吉岡紙子染。
「心中重井筒」近松門左衛門(青空文庫)
末尾部(原文より)
踏みはづしてかつぱと落ち、水のあはれや汲み上げて、重井筒の心中と、御法の水をぞたゝへける。
「心中重井筒」近松門左衛門(青空文庫)
原文を読む
原文はアプリに収録しています(縦書きで読めます)。底本:「近代日本文学大系」第6巻 近松門左衛門集 上(国民図書、1927年)。国立国会図書館デジタルコレクションで公開されている底本の画像と、同館「次世代デジタルライブラリー」のOCRテキスト(パブリック・ドメイン)をもとに、画像と照らし合わせて起こし、本文だけを収録した(ルビ・註の印・曲節の指定・下之巻の道行の題・解題・註釈は省いた)。旧字は新字に改めた(仮名遣いは底本のまま)。