五十年忌歌念仏(近松門左衛門)のあらすじ・登場人物
笠をかぶって唄い歩く、お夏の狂乱
- 恋愛
- 古典
- 文字数
- 16,773字
- 読了目安
- 約34分
- 表記
- 新字旧仮名
- 舞台
- 兵庫県
- 大阪府
この作品について
近松門左衛門の人形浄瑠璃。大坂・竹本座で上演された世話物(初演年は確かめられなかった)で、上・中・下の三巻から成る。播磨・姫路の米問屋の手代清十郎と、主人の娘お夏が恋に落ち、無実の罪で清十郎が命を落とす、という姫路に伝わる実話の悲恋を題材にしている。この題材は、井原西鶴の「好色五人女」にも描かれた。事件の年は記録によって寛文2年説・万治2年説などに分かれる。近松は、事件の裏に手代勘十郎の悪だくみを置き、金をめぐる騙しと誤解が二人を追い詰める筋に作り替えた。最後の下之巻では、笠をかぶって歌念仏を唄い歩くお夏の狂乱を、芝居の山場にしている。本書は「近代日本文学大系」第6巻(国民図書、1927年)による原文で、国立国会図書館が公開する底本の画像とOCRテキストを照らし合わせて起こし、収録した。
あらすじ
【上之巻】和泉国水間の百姓、佐治右衛門は、娘のお俊と娘分のおさんを連れて、姫路への船に乗る。大坂の川口で、姫路の但馬屋の手代、勘十郎に出会う。勘十郎は、佐治右衛門の息子の清十郎が、主人の娘お夏と深い仲になり、お夏は身ごもり、立野家との縁談が決まって嫁入道具も整ったと告げる。そのうえで、道具屋に払う銀を渡さずに嫁入りを止めさせれば、清十郎の命は助かると言い、百五十両か八貫目を出せと迫る。佐治右衛門は銀が無いと断り、代わりに道具屋の蒔絵師のもとへ行き、お夏の嫁入りには差し支えがあるから道具は預かると、勘十郎の言うままに証文へ名を書き入れる。【中之巻】姫路の但馬屋では、主人の九左衞門が、娘お夏の嫁入りに備えて蚊帳の祝儀を開いている。お夏は縁談を嫌がっている。大坂から戻った清十郎は、人目を忍んでお夏と睦み合うところを手代の源十郎に見られ、口止めを頼む。源十郎は承知するが、裏で勘十郎に告げてしまう。勘十郎は、佐治右衞門が署名した差し止めの証文を九左衞門に示し、清十郎親子が結託して嫁入道具を邪魔したと訴える。清十郎の荷からは、お夏から借りた小判七十両も出て、盗人として家から追い出される。清十郎とお夏は、小袖と布子を取り替えて別れを惜しむ。清十郎は大釜に身を隠し、夜更けに勘十郎を討とうと忍び込むが、暗闇のなかで源十郎を刺し殺してしまう。【下之巻】清十郎の身を案じるお夏は、狂乱して、笠をかぶり歌念仏を唄いながら、姫路の町をさまよう。やがて清十郎は、人違いの殺しの科で、獄門にかけられる場へ引き出され、尼姿のお夏と目を見合わせる。清十郎は、煙管を喉に押し込んで自害し、お夏も槍で喉を突くが、息を取り戻す。そこへ、佐治右衞門が、道頓堀で取り違えた笠の中から出てきた源十郎の手紙を差し出す。手紙から、勘十郎が嫁入道具の代銀を使い込んだことが明るみに出る。勘十郎は罪を認めて出家し、お夏も、清十郎を弔う尼となる。
登場人物
- 清十郎 姫路の米問屋、但馬屋の手代。主人の娘お夏と恋仲になり、無実の罪を着せられる
- お夏 但馬屋九左衛門の娘。清十郎を思い、狂乱する
- 九左衛門 姫路の米問屋、但馬屋の主人
- 勘十郎 但馬屋の手代。使い込みを清十郎に着せようとする
- 源十郎 但馬屋の手代。清十郎に人違いで刺される
- 佐治右衛門 清十郎の父。和泉国水間の百姓
冒頭部(原文より)
通ひ車は、小町が仇の情に乗せられ、閨の扇は、斑女が親骨にせかれ、形身の烏帽子は、行平のいひかぶり、柏木の鞠、山路が笛、古今其の品かはれども、皆これ恋路の寄せ框、根太も根強き門柱、
「五十年忌歌念仏」近松門左衛門(青空文庫)
末尾部(原文より)
その夏衣墨に染め、年忌々々の手向草、花の帽子に修行の笠、笠が能く似た阿弥陀笠、弥陀の御国に生まれけり。
「五十年忌歌念仏」近松門左衛門(青空文庫)
原文を読む
原文はアプリに収録しています(縦書きで読めます)。底本:「近代日本文学大系」第6巻 近松門左衛門集 上(国民図書、1927年)。国立国会図書館デジタルコレクションで公開されている底本の画像と、同館「次世代デジタルライブラリー」のOCRテキスト(パブリック・ドメイン)をもとに、画像と照らし合わせて起こし、本文だけを収録した(ルビ・註の印・曲節の指定・場面の題・解題・註釈は省いた)。旧字は新字に改めた(仮名遣いは底本のまま)。