心中二枚絵草紙(近松門左衛門)のあらすじ・登場人物
勘当の兄と遊女の、同じ日の死
- 恋愛
- 古典
- 文字数
- 13,343字
- 読了目安
- 約27分
- 表記
- 新字旧仮名
- 舞台
- 大阪府
この作品について
近松門左衛門の人形浄瑠璃。上・中・下の三巻から成る世話物で、大坂・蜆川の遊女と、長柄の百姓の息子の心中を描く。長柄の市郎右衛門は、天満屋の遊女お島のもとへ通いつめ、お島を請け出そうと金を使っていた。家には、一在所の講中が京の本山へ納める報恩講の銀が預けられていたが、遊びの借金に追われる弟の善次郎がこの銀を盗み、罪は兄の市郎右衛門にかぶさる。父の介右衛門は、市郎右衛門を実の子ではないと明かしながら、涙ながらに勘当する。身の置き所を失った市郎右衛門とお島は、一里ほど離れた別々の場所で、数珠を繰る数を合図に、同じ時に命を絶つ約束をする。題は、生きたとも死んだとも噂される二人の姿を、二枚の絵草紙にたとえたもの。本書は「近代日本文学大系」第6巻(国民図書、1927年)による原文で、国立国会図書館が公開する底本の画像とOCRテキストを照らし合わせて起こし、収録した。
あらすじ
【上之巻】酉の年の顔見世の頃、大坂・蜆川の天満屋の遊女お島は、馴染の客に揚げられて、芝居見物のあと舟で遊ぶ。舟の上では、お島の浄瑠璃が話の種になる。陸から舟をつけてきた男が、お島の馴染の長柄の市郎右衛門だった。連れの客の貞と言い争いになり、市郎右衛門は皮肉の浄瑠璃で貞をからかうが、お島にたしなめられて引きさがり、自分の振る舞いを悔やむ。【中之巻】市郎右衛門の弟の善次郎は、遊びの借金のとりたてに追われている。父の介右衛門は、講中の報恩講の銀を京へ納めに行くつもりで、掛硯にしまう。そこへお島から市郎右衛門あての文が届く。善次郎は人目のない間に掛硯の錠を開け、二包の銀と小判を盗んで、酒徳利に小判を隠す。市郎右衛門が盗みの疑いを受けると、介右衛門は、市郎右衛門が実の子ではないことまで明かして嘆き、杖で打って勘当する。市郎右衛門は、折れた杖を形見にして、家を出る。【下之巻】天満屋では、亭主がお島の部屋を気づかい、お島は酔ったふりで、勘当された市郎右衛門の身の上を語る。夜更け、市郎右衛門は門の外に来て、鏡の光でお島に合図を送る。二人は別々の場所で、数珠を繰る数を合図に、同じ時に自害しようと約束する。弟の善次郎は、お島の言葉に心を改め、兄を探して歩く。一万遍の念仏がすむころ、市郎右衛門とお島は、それぞれ剃刀で喉を突いて果てる。善次郎は、川端に残された衣裳と書置きを拾い、二人の亡骸を衣裳に包んで運び去る。
登場人物
- お島 蜆川の天満屋の遊女。市郎右衛門の馴染
- 市郎右衛門 長柄の百姓の息子。お島に通いつめ、弟の盗みの罪を負う
- 善次郎 市郎右衛門の弟。遊びの借金のために講の銀を盗む
- 介右衛門 市郎右衛門・善次郎の父。講中の銀を預かる
- 貞 お島を揚げた客。市郎右衛門と争う
冒頭部(原文より)
既に今年の酉もたち、戌の顔みせ朝木戸を、曙深く提灯の、影きら/\と初霜の、おきなの面のにこやかに、始まり呼ばう声に引かれて、老いも若きも見る人は、余念なじみに御最屓に、ようお出やつた朝日影。
「心中二枚絵草紙」近松門左衛門(青空文庫)
末尾部(原文より)
扠こそ世上に此の男、死んだ風説死なぬ沙汰、生死二枚の絵草紙に、恋路の廻向をうけにける。
「心中二枚絵草紙」近松門左衛門(青空文庫)
原文を読む
原文はアプリに収録しています(縦書きで読めます)。底本:「近代日本文学大系」第6巻 近松門左衛門集 上(国民図書、1927年)。国立国会図書館デジタルコレクションで公開されている底本の画像と、同館「次世代デジタルライブラリー」のOCRテキスト(パブリック・ドメイン)をもとに、画像と照らし合わせて起こし、本文だけを収録した(ルビ・註の印・曲節や役の指定・解題・註釈は省いた)。旧字は新字に改めた(仮名遣いは底本のまま)。