今宮の心中(近松門左衛門)のあらすじ・登場人物
破った手形が、二人を森へ追う
- 恋愛
- 古典
- 文字数
- 16,591字
- 読了目安
- 約33分
- 表記
- 新字旧仮名
- 舞台
- 大阪府
この作品について
近松門左衛門の人形浄瑠璃。世話物(初演年は確かめられなかった)で、上・中・下の三巻から成る。大坂・本町の新物店「菱屋」に奉公する手代の二郎兵衛と、同じ店のおきさは、深く思い合っている。ところが、店から独立した元手代の由兵衛もおきさを望み、おきさの父・太郎三郎も、故郷の三田へ連れ帰って嫁入りさせようと大坂へ出てくる。隠居の貞法はおきさを預かると申し出るが、由兵衛は、文面を伏せたまま親子に手形の判を押させる。二郎兵衛は、その手形がおきさを由兵衛に渡す約束だと思い込み、夜更けに主人の鍵を盗み出して手形を引き裂く。しかし、由兵衛に見つかっておきさとともに盗人にされ、貞法の意見でいったんはおきさを諦めると誓う。そのあとで、自分が破ったのは店の家質(家を質に入れた)七貫五百目の手形だったと気づき、おきさと店を逃げ出す。二人は今宮の戎の森で、店の絹を使って首をくくる。小さな思い違いが取り返しのつかない罪に変わる経緯を、大坂の商家の暮らしの細部とともに描く。本書は「近代日本文学大系」第6巻(国民図書、1927年)による原文で、国立国会図書館が公開する底本の画像とOCRテキストを照らし合わせて起こし、収録した。
あらすじ
【上之巻】夏の一日、菱屋の隠居・貞法とその家族は、独立して安堂寺町に店を持つ由兵衛の招きで、大坂の橋々を見立てた舟遊びに出る。由兵衛は貞法に「女房を持て」と勧められ、思う相手がいると匂わせる。実は、同じ店のおきさを望んでいる。そこへおきさが、父・太郎三郎が三田から来て、在所の嫁入りを急がせると訴える。太郎三郎も舟へ来て、娘は大坂の男を持つと言い張ると嘆く。貞法はおきさを自分が預かり、よい婿を取らせると請け合い、由兵衛は親子に手形を書かせる。文面を聞かせないまま判を押させる由兵衛の様子を、物陰の二郎兵衛が見て、提灯を消そうと石を投げ、由兵衛や久三らを騒がせる。【中之巻】本町の菱屋で、二郎兵衛とおきさは由兵衛の企みを疑って嘆く。主人の四郎右衛門が医者に灸をすえさせる隙に、二人は帯の鍵で簞笥を開け、一通の手形を見つけて引き裂く。そこへ由兵衛が現れ、戸棚に隠れた二郎兵衛を閉じ込めて、おきさと二人を盗人として騒ぎ立てる。貞法は二人を叱り、おきさを由兵衛に与えるよう二郎兵衛に意見する。二郎兵衛はいったん誓うが、破った手形が本町の家質の手形だったと気づく。おきさと落ち合った二郎兵衛は、積んであった絹を身にまとって久三を脅し、二人は店を逃れ出る。【下之巻】雷の鳴る夜、二人は今宮の戎の森にたどり着く。互いの身を案じ、罪を悔やみ、来世でめぐり逢うことを誓う。店の絹を松の枝にかけ、二人は首をくくって果てる。
登場人物
- 二郎兵衛 大坂・本町の新物店「菱屋」の手代。おきさと深い仲にある
- おきさ 菱屋の奉公人。故郷は三田で、父に嫁入りを迫られる
- 由兵衛 菱屋から独立して安堂寺町に店を持つ元手代。おきさを望む
- 貞法 菱屋の隠居。おきさを預かり、二郎兵衛に意見する
- 四郎右衛門 菱屋の主人
- 太郎三郎 おきさの父。三田の在所に暮らす
冒頭部(原文より)
えい/\、えい/\、月見花見は何所も同じ。
「今宮の心中」近松門左衛門(青空文庫)
末尾部(原文より)
裄丈揃ひし死姿、刃に伏すは古手にて、これ心中の新物と、聞く人廻向をなしにける。
「今宮の心中」近松門左衛門(青空文庫)
原文を読む
原文はアプリに収録しています(縦書きで読めます)。底本:「近代日本文学大系」第6巻 近松門左衛門集 上(国民図書、1927年)。国立国会図書館デジタルコレクションで公開されている底本の画像と、同館「次世代デジタルライブラリー」のOCRテキスト(パブリック・ドメイン)をもとに、画像と照らし合わせて起こし、本文だけを収録した(ルビ・註の印・曲節の指定・解題・註釈は省いた)。旧字は新字に改めた(仮名遣いは底本のまま)。