薩摩歌(近松門左衛門)のあらすじ・登場人物
薩摩の恋と、京の女男の入れ替わり
- 恋愛
- 古典
- 文字数
- 26,414字
- 読了目安
- 約53分
- 表記
- 新字旧仮名
- 舞台
- 京都府
この作品について
近松門左衛門の人形浄瑠璃。外題は「源五兵衛おまん 薩摩歌」で、上・中・下の三巻から成る世話物。薩摩の若者・菱川源五兵衛と、芭蕉布屋の娘おまんの恋を軸に、親の敵を追う武士・笹野三五兵衛と、その許婚の後家・小まんの話を絡めて描く。源五兵衛は寺の後住になる約束を捨ててまでおまんと契り、国を出て諸国を巡る身となって、京の大名屋敷に草履取として雇われる。その屋敷では、思わぬ人物の入れ替わりが明かされてゆく。中之巻では、おまんの家に奉公人として住みこんだ源五兵衛が、継母の決めた縁談に追い詰められたおまんとともに、家を追われる。初演の年は確かめられなかったため、成立年は記していない。本書は「近代日本文学大系」第6巻(国民図書、1927年)による原文で、国立国会図書館が公開する底本の画像とOCRテキストを照らし合わせて起こし、収録した。
あらすじ
【上之巻】春、京の大名屋敷で奉公人の採用が行われる。薩摩出身の菱川源五兵衛は、諸国の大名の行列の道具や紋をすらすらと並べ立てて姉御の小まんに気に入られ、「津摩蔵」の名で草履取に決まる。夜、拍子木を打ってまわる源五兵衛は、小まんの部屋に閉じこめられ、問われるままに、寺の後住が決まっていた身で芭蕉布屋のおまんと契り、国を出た経緯を語る。小まんは、八年前に許婚の三五兵衛が病死したと聞いて、後家のまま暮らしていた。小まんに迫られて困る源五兵衛のもとへ、腰元の林が長刀を持って飛び出す。林は、親の敵を討つ機をうかがい、女に化けて小まんのそばに仕えていた三五兵衛だった。源五兵衛は、自分が国元からお尋ね者になっていることも明かし、三五兵衛は仇の居所を知らせてくれた源五兵衛を逃がす。【中之巻】おまんは、琉球屋の娘として、継母から新たな縁談を押しつけられている。そこへ、事介と名を変えた源五兵衛が手間取として現れ、二人は人目を忍んで想いを交わす。縁談の祝いの日、旅の尼になった京屋敷の元腰元・お蘭が現れ、源五兵衛の身を案じて騒ぎを収めようとする。しかし継母に源五兵衛の素性を見破られ、二人は引き離される。おまんは、お蘭の助けで塀を越え、堀に落ちかけながら逃れて、源五兵衛のもとへ向かう。【下之巻】夢と道行の唄をはさんで、おまんは源五兵衛と再会する。追ってきた母は、二人を連れ戻そうとして源五兵衛に斬りかかる。源五兵衛が応じるうち、母をかばったおまんが肩から斬り下げられ、源五兵衛も腹を切る。そこへ三五兵衛と小まんの夫婦が駆けつけ、親の敵を討って本国に帰れたのは源五兵衛の情けのおかげだと礼を述べ、長崎仕込みの外科の腕に頼って、二人の命を救おうとする。
登場人物
- 源五兵衛 薩摩の若者、菱川源五兵衛。津摩蔵、事介と名を変える
- おまん 芭蕉布屋、琉球屋の娘。源五兵衛の恋人
- 小まん 京の屋敷に仕える姉御。三五兵衛の許婚の後家
- 林 小まんの腰元。実は笹野三五兵衛が女に化けた姿
- 新兵衛 琉球屋の主人。おまんの父
- お蘭 京の屋敷の元腰元。のちに旅の尼となる
冒頭部(原文より)
桜咲く、弥生の鴈の出かはりに、新参の燕おきつけて、あとを濁さぬ水の面、這ひ出の蛙二合半、首にかけたか杜鵑、木々の梢も繁蔵と、誰が呼子鳥草履取、一季半季の花鳥も、とかくは御縁次第なり。
「薩摩歌」近松門左衛門(青空文庫)
末尾部(原文より)
とり/\さまざま取り繕ひ、乗物に乗せ、三味線に乗せて謡ふは、源五兵衛何処へ往きやるぞ薩摩の山の、山は宝の山とかや。
「薩摩歌」近松門左衛門(青空文庫)
原文を読む
原文はアプリに収録しています(縦書きで読めます)。底本:「近代日本文学大系」第6巻 近松門左衛門集 上(国民図書、1927年)。国立国会図書館デジタルコレクションで公開されている底本の画像と、同館「次世代デジタルライブラリー」のOCRテキスト(パブリック・ドメイン)をもとに、画像と照らし合わせて起こし、本文だけを収録した(ルビ・註の印・曲節の指定・解題・註釈は省いた)。旧字は新字に改めた(仮名遣いは底本のまま)。