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好色一代女(井原西鶴)のあらすじ・登場人物

嵯峨の庵で老女が語る半生

  • 恋愛
  • 古典

井原西鶴 1686年

文字数
48,704字
読了目安
約1時間37分
表記
新字旧仮名
種別
小説
舞台
  • 京都府
  • 大阪府
  • 東京都

この作品について

井原西鶴の浮世草子。1686年(貞享3年)に大坂で刊行された。六巻二十四章。「好色一代男」「好色五人女」とならぶ好色物の代表作で、男の遍歴を描いた一代男に対し、こちらは女の一生を、本人の語りでつづる。京の西、嵯峨野の草庵「好色庵」に住む老女のもとを、二人の若者が訪ねる。老女は、宮中の女官のもとで宮仕えをした十代のころの恋の失敗から語りはじめ、島原の太夫、江戸の大名家の側室、寺の大黒、女筆の師匠、商家の腰元、湯女、大坂の遣手、そして夜の街角に立つ女へと、勤め先も身分もつぎつぎに変えて落ちていった半生を、悔いとともにたどる。男が遊ぶ側から描かれた一代男とはちがい、売られ、雇われ、追われる女の側から、遊里や武家・町家の奉公先の内情が見えてくる。性にかかわる描写があり、底本には伏字(○)も多い。本書は「近代日本文学大系」第3巻(国民図書、1927年)による原文で、国立国会図書館が公開する底本の画像とOCRテキストを照らし合わせて起こし、収録した。

あらすじ

【巻一】嵯峨野の草庵「好色庵」に住む老女を、二人の若者が訪ねて半生の話を請う。老女は、父が殿上人に連なる家筋の出ながら、宮中の女官に仕えた十一歳のころから恋文のやりとりに心を奪われ、さる方の青侍と通じたことが露顕して、十三で宇治橋のあたりへ追い出されたと語る。相手の男は命を落とした。のち舞曲を仕込まれる少女たちの仲間に入って座敷に出て、西国の武家の女中に見初められて嫁に迎えられるが、嫁ぎ先で笑い話のようなことになり、親里へ返される。次に、江戸の大名が側室を探していると聞いて京の人置が百七十余人を見せても気に入られず、宇治に隠れていた老女が選ばれて武蔵へ下り、浅草の下屋敷で華やかに暮らす。だが殿は若くして衰え、都の女のせいと疑われて、家老たちの手で暇を出される。さらに親の借金の保証の穴埋めに五十両で島原に身を売り、十六歳で太夫として突き出されるが、気に入らぬ客には身を許さずにいるうち、客足が遠のいていく。【巻二】気位の高さが祟って太夫から天神に格下げされ、頼みにしていた客三人も商いの失敗で離れ、病で髪も薄くなって、客に見捨てられていく。さらに下の格の女郎に落とされ、島原の安い女郎の値段の段取りを身をもって知り、十五で大坂の新町へ売られて二年を勤め、年季が明けて淀川の船で京へ戻る。次は若衆姿に身を変え、寺小姓を装って寺々の住持に取り入り、ある寺には三年で銀三貫目の約束で大黒(住職の妻)に入るが、寺の暮らしにも飽き、懐妊を装って寺を出る。京へ戻ると女筆指南の看板を掲げ、恋文の代筆で暮らしを立てるうちに、代筆を頼んできた男を自分のものにしてしまうが、その男は翌年には病んで衰え果てる。【巻三】呉服商の腰元に奉公したが、主人の気を引こうとして奥方を呪詛し、露顕して狂ったようにさまよったすえ、稲荷の辺りで懺悔して正気に戻る。続いて江戸の大名家で表使いを勤め、奥方が側室に似せた人形を責めさいなむ「悋気講」の騒ぎを目にして奉公に懲り、上方へ戻る。大坂では歌比丘尼に身をやつし、舟に招かれて客をとる暮らしを送る。さらに髪結いとして奥方に仕え、奥方の髪が作り物であることを殿に知らせようと企てて奥方を実家へ追いやり、その後釜に収まろうと殿に近づく。【巻四】大坂で嫁入りの介添え女に雇われ、見栄で身代を傾ける縁組の内情を見て回る。江戸では武家のお物師(裁縫役)となるが、若殿に召されたのち独り寝のさびしさがつのって暇を取り、本郷の裏店に仕立屋の札を出す。出入りの呉服屋の手代を相手にいたずらをしかけたあと、江戸に見切りをつけて京へ戻る。次は武家屋敷の茶の間女となり、宿下がりの折に供をした七十過ぎの中間に思いを寄せられて、煮売屋の二階であきれた目に遭う。堺では七十ばかりの裕福な女の隠居に召し抱えられ、その隠居が来世は男に生まれて思いのままにしたいと願うのを聞く。【巻五】色勤めに飽きて京の茶屋の女となり、石垣町や祇園・清水の客あしらいを重ねるが、衰えて暇を出され、ある大尽の囲い者になる。のち湯女となって夜ごとの客をとり、目を患って女医者の宿に身を寄せ、同じ境遇の女たちの身の上話を聞く。やがて五条の扇屋に後妻に迎えられ、器量で店を繁盛させるが、客との浮気から追い出される。西陣の糸繰り、上長者町の隠居の世話をへて、大坂では問屋の蓮葉女となり、秋田の客に取り入って誓紙を取り、子ができたと偽るものの、客が手代を通して金を出して話をつけてしまう。【巻六】大坂の裏長屋に住む隠れ売春の女たちの宿の見聞から始まり、伊勢の古市で遊山宿の「娘」を装い、松坂では旅籠屋の客引き、桑名の浜では紅や針を売り歩く。のち大坂の新町で遣手を勤めるが人に嫌われ、玉造の裏長屋に落ちる。六十五歳となった夜、おびただしい水子の姿が現れて恨み言を言うのに肝を冷やす。隣の三人の女に誘われ、夜の街角で客を引こうとするが、一人も寄りつかず、これを最後に勤めを納める。京へ戻って大雲寺の五百羅漢の堂に詣で、居並ぶ像のひとつひとつに、長者町の吉、五兵衛、麹町の団平、寺の長老ら、かつての男たちの面影を見て、泣き崩れる。池に身を投げようとして昔の馴染みに引き止められ、笹葺きの庵を結んで念仏の日々を送り、すべてを懺悔として語り終える。

登場人物

冒頭部(原文より)

美女は命を断つ斧と古人もいへり。心の花散り夕の焼木となれるは、何れか是れをのがれし、されども時節の外なる朝の嵐とは、色道に溺れ、若死の人こそ愚かなれ、其の種は尽きもせず。

「好色一代女」井原西鶴(青空文庫)

末尾部(原文より)

よし/\是れも懺悔に身の曇晴れて、心の月の清く春の夜の慰み人、我は一代女なれば何をか隠して益なしと、胸の蓮華開けてしほむまでの身の事、たとひ流れを立てたればとて心は濁りぬべきや。

「好色一代女」井原西鶴(青空文庫)

名文

美女は命を断つ斧と古人もいへり。

色道に生きる女の半生を語る一代女の書き出し。美女は命を断つ斧という古い言葉を引き、美しさが身を滅ぼす皮肉を告げる。

原文を読む

原文はアプリに収録しています(縦書きで読めます)。底本:「近代日本文学大系」第3巻 井原西鶴集(国民図書、1927年)所収の「好色一代女」。国立国会図書館デジタルコレクションで公開されている底本の画像と、同館「次世代デジタルライブラリー」のOCRテキスト(パブリック・ドメイン)をもとに、画像と照らし合わせて起こし、本文だけを収録した(各巻の目録・章題の脇の副題・ルビ・挿絵は省いた。底本の伏字はそのまま残した)。旧字は新字に改めた(仮名遣いは底本のまま)。

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