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女殺油地獄(近松門左衛門)のあらすじ・登場人物

油にまみれた殺しの夜

  • 家族
  • 社会
  • 古典

近松門左衛門 1721年7月

文字数
23,935字
読了目安
約48分
表記
新字旧仮名
舞台
  • 大阪府

この作品について

近松門左衛門の人形浄瑠璃。1721年(享保6年)7月に大坂・竹本座で初演された世話物で、近松の最晩年の作のひとつ。上・中・下の三巻からなり、大坂の油屋の息子・河内屋与兵衛を中心に、親子や近隣の人々の関わりを描く。初夏の野崎参りで、遊び仲間と連れ立った与兵衛は、同業の手島屋の女房お吉と茶屋で出会う。町人の暮らしに入り込む金銭の問題や、家族の情をめぐる対話が、人物たちの立場や性格を浮かび上がらせる。世話物の中でも事件を激しい舞台表現に仕立てた作品として知られる。本書は「近代日本文学大系」第7巻(国民図書、1928年)による原文で、国立国会図書館が公開する底本の画像とOCRテキストを照らし合わせて起こし、収録した。

あらすじ

【上巻】初夏の野崎参り。大坂の油屋の次男で二十三歳の河内屋与兵衛は、遊び仲間の弥五郎・善兵衛と、天王寺屋の遊女・小菊に会津の客が付いていると知り、喧嘩を仕掛けようと待ち構える。茶屋で隣り合わせた筋向かいの手島屋の女房お吉に、遊びを意見される。やがて小菊の客と取っ組み合い、泥を掛けた相手は馬に乗った侍の供で、伯父の山本森右衛門だった。主人の取りなしで斬られずに済むが、与兵衛は泥だらけでお吉に助けを求め、茶屋で着物を洗ってもらう。それを知った夫の七左衛門は疑いの目を向ける。【中巻】山上講の下向の日。与兵衛の継父・徳兵衛と母は、病に伏した妹おかちを心配する。そこへ兄の太兵衛が、野崎の騒ぎで森右衛門が浪人することになったと知らせる。与兵衛は、伯父が主人の金を使い込んだと偽って三貫目を無心する。山伏の祈祷の場では、おかちが与兵衛の想う遊女を嫁に迎えてくれと口走り、親子の争いになる。与兵衛は継父を踏みつけ、妹を踏み、母に朸で打たれ、ついに勘当されて追い出される。【下巻】端午の節句の前夜。与兵衛は親の判を偽って借りた銀の返済に追われ、手島屋の前で継父と母が自分を案じて涙を流すのを聞く。お吉は両親の置いていった銭と粽を差し出すが、与兵衛は足りないと二百匁を貸してくれと頼む。お吉は夫の留守に貸せないと断る。切羽詰まった与兵衛は、油の樽を差し出して量らせるうちに、お吉を刺し殺し、流れた油に足を取られながら銀を奪って逃げる。三十五日の逮夜、手島屋の居間に鼠が落とした紙切れが、野崎参りの割付の与兵衛の筆跡と判る。そこへ何食わぬ顔で現れた与兵衛は七左衛門に問い詰められ、暴れて逃げようとするが、外で聞いていた森右衛門と役人に捕らえられる。着ていた袷の血の跡という証拠を突きつけられた与兵衛は、ついに罪を認める。

登場人物

冒頭部(原文より)

船は新造の乗り心サヨイヨエ、君と我と我と君とは、図に乗つた乗つて来た、しつとんとん/\しとゝん/\、しつとゝ逢瀬の浪枕、杯は何処いた。君が杯いつも飲みたや武蔵野の、月の、月の夜すがら戯れ遊べ。囃し立てたる大騒ぎ、北の新地の料理茶屋、主人なけれど咲く花や、後家のおかめが請けこんで、客の変名は郎九とて、生まれは陸奥会津にて、名代流さぬ金遣ひ、この頃浪華此の里へ、登りつめたよ天王寺屋、小菊を思ひ、思はれたさに、鯰川よりゆら/\と、野崎参りの屋形船、卯月中旬のはつあつさ、末の閏に追繰りて、まだ肌寒き川風を、酒に凌ぎてそゝり行く。

「女殺油地獄」近松門左衛門(青空文庫)

末尾部(原文より)

果ては千日千人聞き、万人聞けば十万人、残る方なく世の鑑、伝へて君が長き世に、清からぬ名や残すらん。

「女殺油地獄」近松門左衛門(青空文庫)

名文

まだ此の上に根性の直る薬には母が生肝を煎じて飲ませといふ医者あらば、身を八裂も厭はねども、一生夫の銭金、文字ひらなかちがへぬ身が、子故の闇に迷はされ、盗みして顕はれた。恥かしゆござる。

近松『女殺油地獄』で、放蕩息子の与兵衛を案じる母の告白。勘当した子に銭を届けようとした、子ゆえの闇に迷う親心が胸を打つ。

原文を読む

原文はアプリに収録しています(縦書きで読めます)。底本:「近代日本文学大系」第7巻 近松門左衛門集 下(国民図書、1928年)。国立国会図書館デジタルコレクションで公開されている底本の画像と、同館「次世代デジタルライブラリー」のOCRテキスト(パブリック・ドメイン)をもとに、画像と照らし合わせて起こし、本文だけを収録した(ルビ・註の印・曲節の指定・解題・註釈は省いた)。旧字は新字に改めた(仮名遣いは底本のまま)。

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