随筆とは
- 分類
- 形式・ジャンル
- 読み
- ずいひつ
筆の赴くままに、見聞や感想、思索を自由な形式で書きつづる散文。『枕草子』『方丈記』『徒然草』を古典の三大随筆とし、鴨長明が乱世の無常を澄んだ和漢混淆文でつづった『方丈記』はその代表である。近代に入ると、写生を説いた正岡子規が病床の日々を淡々と記した『病牀六尺』『墨汁一滴』で新しい随筆の道を開き、夏目漱石門下の物理学者・寺田寅彦は、科学者の観察眼とやわらかな情趣を兼ねそなえた『団栗』『天災と国防』などの随筆に独自の境地を拓いた。ほかにも、東京の市中を歩いた永井荷風『日和下駄』、陰影の美学を論じた谷崎潤一郎『陰翳礼讃』、箴言集の趣をもつ芥川龍之介『侏儒の言葉』、食と美を語った北大路魯山人の一連の随想など、多くの作家が小説とは別の魅力をもつ名品を残した。虚構によらず書き手の人柄や思索がじかに立ちあらわれる点に、随筆独特の味わいがある。