俳文とは
- 分類
- 形式・ジャンル
- 読み
- はいぶん
俳諧の精神や発想で書かれた散文。簡潔で含みのある文体と、洒落や機知、古典を踏まえた言い回しを特色とし、多くは文中や文末に発句を添える。松尾芭蕉が文芸として確立したとされ、近江の幻住庵での日々を記した『幻住庵記』(元禄3年・1690年)などは、俳文の優れた例として知られる。芭蕉の『おくのほそ道』も、散文と発句を組み合わせた紀行で、俳文の流れに属する。蕉門の森川許六は、芭蕉や門人たちの俳文を集めた『風俗文選』(宝永3年・1706年)を編んだ。江戸中期には尾張の横井也有が軽妙洒脱な文章で知られる『鶉衣』を残し、後期には小林一茶が、幼い娘を失った悲しみなどを率直につづる『おらが春』を書いた。文政2年(1819年)の一年を記し、一茶の没後、嘉永5年(1852年)に刊行されたこの書は、個性的な俳文の代表例である。明治以降は、俳句改革を進めた正岡子規とその周辺が、見たものをありのままに写す写生文を試み、俳文の考え方は高浜虚子や夏目漱石らを通じて近代の随筆・小説にも受け継がれた。