歌物語とは
- 分類
- 形式・ジャンル
- 読み
- うたものがたり
和歌を中心に据え、その歌が詠まれたいきさつを短い話として語る物語。平安時代前期から中期にかけて成立し、『伊勢物語』『大和物語』『平中物語』が代表とされる。『万葉集』の左注や『古今和歌集』の詞書のように、歌の由来を記した文章が発達したものとされ、歌の味わいを伝えることに重きを置く点で、虚構の筋を長く展開する『竹取物語』のような作り物語とは性格を異にする。『伊勢物語』は「むかし、男ありけり」で始まる百二十五の章段から成り、在原業平を思わせる男の一生を、元服から死に至るまで歌とともにたどる。東下りや筒井筒など、のちの和歌・能・物語に取り上げられた話が多く、『源氏物語』のなかにも「在五が物語」として名が見える。『大和物語』は10世紀半ば以降の成立とされ、貴族や女たちにまつわる歌話を集める。『平中物語』は平貞文(平中)を主人公とする。色好みとして知られたこの平中の失恋譚は『今昔物語集』などにも語られ、芥川龍之介の『好色』(大正10年)の素材となった。歌と物語を結びつけたこの形式は、のちの物語文学の展開の基盤となった。