竹取物語(作者不詳)のあらすじ・登場人物
物語の出で来はじめの親
- 幻想
- 恋愛
- 古典
- 文字数
- 19,022字
- 読了目安
- 約38分
- 表記
- 新字旧仮名
- 種別
- 小説
- 舞台
- 京都府
- 静岡県
この作品について
平安時代の前期、9世紀末から10世紀初めごろに成立したとされる、現存する日本最古の物語。作者はわかっていない。「源氏物語」の絵合の巻で「物語の出で来はじめの親」と呼ばれている。竹取の翁が光る竹の中から見つけた小さな女の子は、三月ほどで美しい娘に育ち、なよ竹のかぐや姫と名づけられる。言い寄る五人の貴公子に、仏の御石の鉢・蓬萊の玉の枝・火鼠の裘・龍の首の珠・燕の子安貝という難題を出してことごとく退け、帝の求めにも応じなかった姫は、八月十五夜、月の都からの迎えを受けて、天へ帰っていく。求婚者たちの失敗を描く滑稽と、育ての親や帝との別れの哀しみを、和歌を交えてつづる。本書は武田祐吉の校註本(明治書院、1930年)による原文で、国立国会図書館が公開する底本の画像とOCRテキストを照らし合わせて校正し、収録した。
あらすじ
竹取の翁は、根元の光る竹の中に三寸ほどの女の子を見つけ、妻の嫗と育てる。それからは竹を取るたびに黄金の詰まった竹が見つかり、翁は豊かになる。女の子は三月ほどで美しい娘に育ち、なよ竹のかぐや姫と名づけられる。その評判に世の男たちは心を乱し、なかでも熱心な五人の貴公子が求婚する。姫は、石作の皇子には仏の御石の鉢、車持の皇子には蓬萊の玉の枝、阿倍のみむらじには火鼠の裘、大伴の大納言には龍の首の珠、石上の中納言には燕の子安貝を持ってくるよう求める。石作の皇子は山寺の古い鉢を持ってきて見破られ、車持の皇子は職人に作らせた偽の玉の枝を、代金を求める職人たちの訴えで暴かれる。火鼠の裘は火にくべると燃えてしまい、大納言は嵐に遭って命からがら逃げ帰り、中納言は燕の巣を探るために乗った籠から落ち、のちに命を落とす。やがて帝もかぐや姫に心を寄せ、狩りにかこつけて姫を訪ねるが、姫は影となって姿を消し、二人は歌を交わすだけの間柄となる。三年ほどして、姫は月を見て嘆くようになり、自分は月の都の人で、八月十五日に迎えが来ると打ち明ける。帝は二千人の兵で翁の家を守らせるが、天人たちの前では誰も戦えない。姫は翁と帝に手紙を残し、天の羽衣を着て月へ帰っていく。帝は姫が残した不死の薬を、天に最も近い駿河の山の頂で焼かせる。その山は富士の山と名づけられ、煙はいまも雲の中へ立ちのぼっているという。
登場人物
- かぐや姫 竹の中から見つけられた、月の都の人
- 竹取の翁 かぐや姫を見つけて育てる翁。名は讃岐造麻呂
- 石作の皇子・車持の皇子・阿倍のみむらじ・大伴の御行・石上のまろたり かぐや姫に求婚する五人の貴公子
- 御門 かぐや姫に心を寄せる帝
冒頭部(原文より)
今は昔、竹取の翁といふ者ありけり。野山にまじりて、竹を取りつつ、よろづの事につかひけり。名をば讃岐造麻呂となむいひける。その竹の中に、本光る竹なむ一筋ありける。あやしがりて寄りて見るに、筒の中光りたり。それを見れば、三寸ばかりなる人いと美しうて居たり。
「竹取物語」作者不詳(青空文庫)
末尾部(原文より)
かの奉る不死の薬に、文壺具して御使に賜はす。勅使には、調のいはがさといふ人を召して、駿河の国にあんなる山の頂にもて行くべきよし仰せ給ふ。嶺にてすべきやう教へさせ給ふ。御文、不死の薬の壺ならべて、火をつけてもやすべき由仰せ給ふ。その由承りて、つはものどもあまた具して山へ登りけるよりなむ、その山をばふじの山とは名づけける。その煙、いまだ雲の中へたち昇るとぞいひ伝へたる。
「竹取物語」作者不詳(青空文庫)
名文
今は昔、竹取の翁といふ者ありけり。野山にまじりて、竹を取りつつ、よろづの事につかひけり。名をば讃岐造麻呂となむいひける。
物語の出で来はじめの祖といわれる作品の書き出し。竹を取って暮らす翁の登場から、かぐや姫の物語が始まる。
それを見れば、三寸ばかりなる人いと美しうて居たり。翁いふやう、「われあしたごとゆふべごとに見る竹の中におはするにて知りぬ。子になり給ふべき人なんめり。
光る竹の筒の中に、小さな美しい人を見つける場面。翁の「子になり給ふべき人なんめり」の一言で、かぐや姫と翁夫婦の暮らしが始まる。
おのが身は、この国の人にもあらず、月の都の人なり。それをなむ昔の契ありけるによりなむ、この世界にはまうで来りける。今は帰るべきになりにければ、この月の十五日に、かの本の国より迎へに人人まうでこむず。さらず罷りぬべければ、おぼし歎かむが悲しきことを、この春より思ひ歎き侍るなり。
かぐや姫が自分は月の都の人で、八月十五日に迎えが来ることを明かす場面。物語が一転して別れの悲しみへ向かう転換点。
天の羽衣うち著せ奉りつれば、翁をいとほし悲しとおぼしつる事も失せぬ。この衣きつる人は、物思ひなくなりければ、車に乗りて百人ばかり天人具して昇りぬ。
天人が羽衣を着せると、翁を思う悲しみも消え、かぐや姫は天へ昇っていく。人の情を忘れさせる羽衣の力を描いた、物語の別れの場面。
原文を読む
原文はアプリに収録しています(縦書きで読めます)。底本:武田祐吉 校註「竹取物語」(明治書院、1930年)。国立国会図書館デジタルコレクションで公開されている底本の画像と、同館「次世代デジタルライブラリー」のOCRテキスト(パブリック・ドメイン)をもとに、画像と照らし合わせて校正し、本文だけを収録した(頭注・ルビ・挿絵・附載・解説は省いた)。旧字は新字に改めた(仮名遣いは底本のまま)。