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三つの指環(芥川龍之介)のあらすじ・登場人物

三つの指環が試す王と娘

  • 幻想
  • 恋愛

芥川龍之介 

文字数
5,134字
読了目安
約10分
表記
新字旧仮名

この作品について

バグダッドの王アブダルが、乞食から魔法の指環を受け取る場面から始まる、芥川龍之介の未定稿の童話。冒頭に(談話)として筋をざっと語った梗概があり、そのあとに会話体で書き起こした本編が途中まで続く。底本の岩波書店版全集では題に「(仮)」が付く。三つの指環が人の心を試す物語で、本編は王が娘に身分を明かす場面で途切れている。

あらすじ

冒頭の梗概は次のとおり。バグダッドの寺の前で、乞食が商人風の男にお金を恵まれ、「陛下」と呼んで、毒を感知して石が青くなる魔法の指環を贈って消える。翌日、男は井戸端で毎日話している貧しい美しい娘に結婚を申し込み、娘は、本当に自分を愛する人でなければならないと答える。男は実は王アブダルで、娘を宮殿に連れ帰り、同じ生活をしながら自分の心を見てもらおうとするが、翌朝、娘の顔は腫物だらけになっていた。王はなお声と態度と聡明さが変わらないのを見て安心する。娘が大臣にと勧めた老人ギラルリイは、王の指環の石が青くなったため毒殺を疑われるが、実は鉄の指環をくれた乞食に会い、屈辱を受けたら死ぬつもりで毒を持っていただけだった。娘の顔の腫物は、王の心を試すための膏薬で、娘も乞食から男の心を捉える銀の指環をもらったが、はめなかったという。三人のうち指環をはめたのは王だけで、誤ったのも王だけだと悟り、床に投げつけた指環が割れると、中から神アラアが現れて三人を祝福する。王は娘を妃にし、老人を大臣にしたが、晩年に乱が起こって国を逃れ、チフリス河のほとりで自ら食を求める境遇になるが、そこにも楽しいところがあった。続く本編では、乞食が若い商人(実は王アブダル)に、毒に反応して黒く変わるダイヤの指環を贈る場面から会話体で書かれるが、井戸端でマルシナアという名の娘に身分を明かすところで途切れている。

登場人物

冒頭部(原文より)

 昔々、バグダツドのマホメツト教のお寺の前に、一人の乞食が寝て居りました。丁度その時、説教がすんだので、人々はお寺からぞろぞろと出て来ましたが、誰一人としてこの乞食に、一銭もやる者はありませんでした。最後に一人の商人風の人が出て来ましたが、その乞食を見ると、ポケツトから金を出してやりました。すると乞食は急に起き上つて、「難有う御座います、陛下、アラアはあなたをお守り下さるでせう。」と云ひました。しかしその商人は気にも止めずに行き過ぎようとしますので、乞食は云ひました。「陛下、お止り下さい。お話したい事があります。」すると商人風の人は振り返つて、「私は陛下ではない。」と云ひますと、乞食は「いや、今度の陛下は駱駝追ひになつたり、水汲みになつたりして、下情を御覧になるさうです。私は朝からかうして憐みを乞うて居りますが、誰一人として私にお金を恵んで下さいません。私は陛下にお礼として、一つの指環を差し上げたいと思ひます。この指環は、アラビヤの魔神の作つたものでして、若し誰か陛下を毒害しようとすると、この指環についてゐる、赤い石が青くなります。」と云つて、驚いて見てゐる商人風の人の手に指環をのせると、そのまま掻き消す様に見えなくなりました。

「三つの指環」芥川龍之介(青空文庫)

末尾部(原文より)

 商人は、――いや、カリフ・アブダルは唇に指を加へるが早いか、鋭い口笛を鳴らしました。娘はあまり思ひがけないのに、涼しい眼を見張つたなり、カリフの顔を眺めるばかりです。

「三つの指環」芥川龍之介(青空文庫)

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