水鏡(作者不詳)のあらすじ・登場人物
仙人が語る神代からの歴史
- 歴史
- 古典
- 文字数
- 55,300字
- 読了目安
- 約1時間51分
- 表記
- 新字旧仮名
- 種別
- 小説
- 舞台
- 奈良県
この作品について
平安時代末期から鎌倉時代初期、12世紀末ごろに成立したとされる歴史物語。作者は中山忠親説などがあるが、わかっていない。大和の長谷寺に参籠した七十三歳の老尼が、そこで出会った修行者から、葛城山で出会った仙人(翁)の語る歴史を聞く、という形をとる。仙人が語るのは、神武天皇から仁明天皇までの五十余代の天皇の事績で、のちの大鏡が描く時代より前の歴史にあたる。大鏡・今鏡・増鏡とあわせて「四鏡」と呼ばれ、四鏡のうち時代的に最も古い時代を扱う。本書は国文大観(歴史部「四鏡」、丸岡桂・松下大三郎共編、板倉屋書房、1906年)に収める原文で、国立国会図書館が公開する底本の画像とOCRテキストを照らし合わせて校正し、収録した。
あらすじ
二月の初午の日、岡寺(龍蓋寺)から泊瀬(長谷寺)へ参った老尼は、通夜のあいだ経を読む三十四、五歳ほどの修行者と出会い、互いに後世を願う仲となる。修行者は、おととしの秋に葛城山で出会った仙人の話を聞かせる。経を誦するうちに現れた藤の皮の衣をまとった翁は、世のありさまをただそしる心をたしなめ、神代からこの山にこもって都や諸国の様子を見てきたと語り、仏教の世界の成り立ちから説き起こして、神武天皇以来の歴代の天皇の事績を順に語っていく。巻上は神武天皇から欽明天皇まで、巻中は敏達天皇から孝謙天皇まで、巻下は廃帝(淳仁天皇)から仁明天皇までで、各代の即位・治世・后妃・皇子や、仏教の伝来、遣唐使、藤原氏の台頭などが語られる。最後は、仁明天皇の代まで話し終えた仙人が、見聞きしたことばかりを語ったと述べて話をしめくくる。
登場人物
- 老尼(語り手) 七十三歳。長谷寺で出会った修行者から仙人の話を聞き、それを書きとめる
- 修行者 三十四、五歳。諸国をめぐり、葛城山で仙人に出会った
- 仙人(翁) 葛城山にすみ、神代から都の様子を見てきたという。神武天皇から仁明天皇までの歴史を語る
冒頭部(原文より)
つゝしむべき年にて過ぎにし二月の初午の日、竜盖寺へまうで侍りて、やがてそれより泊瀬にたそがれの程に参りつきたりしに、年のつもりにはいたく苦しう覚えて師のもとにしばし休み侍りしほどにうちまどろまれにけり。
「水鏡」作者不詳(青空文庫)
末尾部(原文より)
唯若くよりかやうの事の心にしみならひて行のひまにも捨てがたければ、われ一人見むとて書きつけ侍りぬ。大鏡の巻も凡夫のしわざなれば仏の大円鏡智の鏡にはよも及び侍らじ。此も若し大かゞみに思ひよそへばそのかたち正しく見えずとも、などか水かゞみのほどは侍らざらむとてなむ。
「水鏡」作者不詳(青空文庫)
原文を読む
原文はアプリに収録しています(縦書きで読めます)。底本:丸岡桂・松下大三郎 共編「國文大觀 歴史部 四鏡」(板倉屋書房、1906年)。国立国会図書館デジタルコレクションで公開されている底本の画像と、同館「次世代デジタルライブラリー」のOCRテキスト(パブリック・ドメイン)をもとに、画像と照らし合わせて校正し、水鏡(巻上・巻中・巻下)の本文だけを収録した(異本の注記・傍注・割注・巻頭の目録は省いた)。旧字は新字に改めた(仮名遣いは底本のまま)。