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「平家物語」ぬきほ(言文一致訳)(宮本百合子)のあらすじ・登場人物

平家に生きた女たちの哀話

  • 歴史

宮本百合子 

文字数
24,767字
読了目安
約50分
表記
新字新仮名
種別
小説

この作品について

宮本百合子が、『平家物語』の女たちの挿話を言文一致で綴り直した小品集。「葵の前」「小督」「小宰相の身投」「内裏女房」「横笛」「義王」の6編は『平家物語』に典拠があり、「海の花」「運命の車」「逢魔ヶ時」の3編を添えた全9編からなる。平家物語の全体を訳したものではなく、抄訳であることに注意。

あらすじ

高倉天皇に愛された少女・葵の前は、天皇から恋歌を賜った悲しさのあまり、床について亡くなってしまう。天皇の悲しみを慰めるために遣わされた琴の名手・小督は、平清盛の怒りを恐れて嵯峨野に身を隠すが、月夜に弾く琴の音から行方を突き止められる。一ノ谷で夫の通盛を失った小宰相は、海に身を投げて後を追う。捕らえられた平重衡は、かつて愛した女房と束の間の再会を遂げる。滝口入道に思いを寄せる横笛は、出家した恋人を訪ねて嵯峨の往生院へ行くが、会ってもらえない。清盛の寵愛を受けた白拍子・義王は、新たに現れた仏御前に取って代わられ、母と妹とともに出家して嵯峨に隠れ住む。そこへ、仏御前も尼の姿で訪ねてくる。最後の三編は、平家物語に拠らない小品で、海の女王である人魚の短い生涯、運命の車を回す女、夕暮れの街を歩く人々に取りつく魔どもを、それぞれ描く。

登場人物

冒頭部(原文より)

 其の頃何より優美でやさしいことの例に云い出されて居たのは中宮の御所に仕えて居る局の女房達がめしつかわれて居た上童の中に葵の前と云って陛下の御側近う仕る事がある上童が居た。およびになるほどの御用がなくっても主上は常に御召になって居るので主の女房も召しつかう事が出来ずかえって主の女房が葵の前を御主人のようにもてなしていらっしゃった。昔のひなうたに「女を生んでも悲しんではならない。女は運よくさえあれば妃ともなれば又妃は后ともなると云う事がある。」かどうかわからないけれども此の御方はきっと末には女御后とも云われる様にも御なりになるだろうと内々、人のうわさをする時などには葵女御等と云って居た。

「「平家物語」ぬきほ(言文一致訳)」宮本百合子(青空文庫)

末尾部(原文より)

つかれて居る人は一向そんな事には気をとめないで只気ぜわしく落つかないで歩いて居る。やがて時も段々にすぎて月の光が少し仄に出て来ると魔どもは小さい尾を背にまいて「今日の逢魔ヶ時はもうすんだまたあした」と云ってその帯なんかの間からそっとぬけ出して街のくぼちをおっかけっこをして居るように走る落葉等に交ってカサコソと変な音を立てて町をころがりぬけ又町を通りぬけして森の洞の住家にかえってしまう。そしてその恐しげな口で「又あしたまたあした」と云って居る。世の中の人達は何もしらないで只あせって居る。

「「平家物語」ぬきほ(言文一致訳)」宮本百合子(青空文庫)

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原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。

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