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三浦老人昔話(岡本綺堂)のあらすじ・登場人物

大久保の老人が語る江戸の昔

  • 歴史

岡本綺堂 

文字数
113,599字
読了目安
約3時間47分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 東京都

この作品について

岡本綺堂による連作短編集。「半七捕物帳」の聞き手である「わたし」が、正月に半七老人の家で、その古なじみの三浦老人と知り合うところから始まる。江戸のころ下谷に住み、今は大久保の旧組屋敷で暮らす三浦老人を訪ねるたびに聞いた江戸の昔話を、「桐畑の太夫」「鎧櫃の血」「人参」「置いてけ堀」「落城の譜」「権十郎の芝居」「春色梅ごよみ」「旗本の師匠」「刺青の話」「雷見舞」「下屋敷」「矢がすり」の十二編にまとめている。捕物帳とは趣を変え、幕末の旗本や御家人、町人、芸人たちの奇妙な事件や身の上話を、老人の語り口のままに淡々と描く。途中で語り手が関東大震災で家を焼かれ、大久保に移り住んだことも記され、失われた江戸と明治の東京を二重に懐かしむ回想の書ともなっている。

あらすじ

二十年あまり前の正月、「わたし」は赤坂の半七老人の家で、大久保に住む三浦老人を紹介される。江戸のころ下谷に住み、半七とも古なじみだったという老人を、わたしはそれから折々に大久保の旧組屋敷へ訪ね、さまざまな昔話を聞いた。第一話「桐畑の太夫」は、清元に凝って太夫の名を名のった旗本の道楽者の話。「鎧櫃の血」は、鎧を売り払った貧乏旗本が大阪城番に赴く道中、鎧櫃に醤油樽を入れて担がせたことから起こる顛末で、のちに主人は鎧櫃の上に首が見えると口走って腹を斬る。「人参」は、病の母に高価な薬の人参を飲ませるため身を売った姉と、母と姉の仇を討った弟の話。「置いてけ堀」では、内職の釣りに出た独り身の御家人が「置いてけえ」の声に悩まされ、やがて一本の櫛をめぐる怪異に見舞われる。「落城の譜」は、講釈場で知り合った侍が受け継いだ法螺貝の秘曲をめぐる話。「権十郎の芝居」では、芝居見物の席で町人と口論した侍が紙屋の夫婦を斬り、のちに彰義隊として上野で討死する。「春色梅ごよみ」は、旗本屋敷に奉公する御家人の娘が人情本をめぐって悲運をたどる話、「旗本の師匠」は、手習いの師匠を務める旗本が武家の子と町人の子の争いに巻きこまれる話である。「刺青の話」は、恋人の母親に刺青のないことをからかわれた駕籠屋の息子が、命を削って刺青を彫らせる哀話。「雷見舞」では、雷嫌いの花魁のもとへ大名家から見舞いの使者に立つ若侍の災難を、雨宿りで知り合った老女とともに聞く。「下屋敷」は、安政のコロリの年に旗本屋敷で奥勤めをしていた老女が、役者を屋敷に招いたことから起きた恐ろしい出来事を懺悔する話。最後の「矢がすり」は、頬に矢傷のある美しい矢場女と、姉を捜して八人を斬った若侍の、旗本家の秘密にまつわる話である。いずれも芝居のような結末には落ちず、「実録は大抵こんなもの」と老人が語るとおり、余韻を残して終わる。

登場人物

冒頭部(原文より)

 今から二十年あまりの昔である。なんでも正月の七草すぎの日曜日と記憶している。わたしは午後から半七老人の家をたずねた。老人は彼の半七捕物帳の材料を幾たびかわたしに話して聞かせてくれるので、きょうも年始の礼を兼ねてあわ好くば又なにかの昔話を聞き出そうと巧らんで、から風の吹く寒い日を赤坂まで出かけて行ったのであった。

「三浦老人昔話」岡本綺堂(青空文庫)

末尾部(原文より)

 すべての事情が斯うわかってみると、庄之助の八人斬にも大いに同情すべき点があります。斬られた相手は皆ごろつきや地廻りで、事の実否もよく糺さず、武士に対して狼藉を働いたのですから、云わば自業自得の斬られ損ということになってしまいました。殊に幕末で、徳川幕府の方でも旗本の侍は一人でも大切にしている時節でしたから、庄之助にはなんの咎めも無くて済みました。稼ぎ人に逃げられたお幸は、桜井の屋敷から内々の扶助をうけていたとか云います。  新内松は品川の橋向うで御用になりました。お金はその時まで一緒にいたらしいのですが、そのゆくえは判りませんでした。それから一年ほど経ってから、神奈川の貸座敷に手取りの女がいて、その右の頬にかすり疵のあとがあると云う噂でしたが、それが彼の矢がすりであるか無いか、確かなことは知った者もありませんでした。くどくも申す通り、新内松に矢がすりお金――この方に一向面白いお芝居がないので、まことに物足らないようですが、実録は大抵こんなものかも知れませんね。

「三浦老人昔話」岡本綺堂(青空文庫)

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