半七捕物帳 鷹のゆくえ(岡本綺堂)のあらすじ・登場人物
品川で逃げた将軍家の鷹
- ミステリ
- 歴史
- 文字数
- 19,215字
- 読了目安
- 約38分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
- 舞台
- 東京都
この作品について
岡本綺堂「半七捕物帳」の一編。五月の雨の日曜日、藤の花の噂から大津絵、鷹匠へと移った話のなかから、「わたし」が本題だけを書き留めたという体裁をとる。安政六年の十月、八丁堀の同心に呼ばれた半七が命じられたのは、将軍家の鷹の探索だった。千駄木の御鷹所の若い鷹匠が、品川の遊女屋で預かりの鷹を逃がしてしまい、見つからなければ切腹を免れないという。将軍の鷹を嵩に着て町人に威張り散らす鷹匠の振る舞い、鷹の餌の小雀を捕る「鳥さし」の仕事、庶民が鷹を飼えば死罪という掟など、鷹をめぐる江戸の制度と風俗が細かく描かれ、空を飛ぶ尋ね物という難題に半七が挑む。
あらすじ
安政六年十月、半七は八丁堀の同心山崎善兵衛に呼ばれ、千駄木の御鷹所の若い鷹匠光井金之助が品川の遊女屋丸屋で、相方のお八重とふざけているうちに預かりの鷹を逃がしたと聞かされる。見つからなければ切腹という大事で、内密に探してほしいとの頼みだった。鷹が飛んだ目黒の方角へ向かった半七は、名主を訪ねたあと、時雨に降られて入った村の蕎麦屋で、千駄木の餌取りである鳥さしの老人と話し込む。鷹の一件を打ち明けると、老人は金之助の身をひどく案じて手伝いを申し出る。蕎麦屋の娘お杉が老人を険しい目で見ていたことから、半七は彼女がもと雑司ヶ谷の鷹匠吉見仙三郎の屋敷に奉公していたと聞き出す。荒物屋の女房の噂話で、お杉が今も吉見と通じ、近くの小料理屋の辰蔵の家で逢っていると知る。辰蔵の店で、博奕の貸しを取り立てに来た馬子に辰蔵が「きょう中に金が入る」と言うのを聞いた半七は、筋向かいの銀杏の小枝が折れ、木の下に鷹の羽が落ちているのを見つける。様子をうかがいに来たお杉を鳥さしの黐竿で捕らえて問い詰めると、前夜お杉と逢った吉見が、朝、銀杏に脚の緒をからませた鷹を捕らえ、辰蔵の勧めで村の大地主当兵衛に百五十両で売る約束をしていた。半七は当兵衛の五つの土蔵に老人の捕った雀を放ち、羽ばたきの音で鷹を見つけ出す。表沙汰にすれば四人の首が飛ぶため、すべて内分に済ませた。後日礼に来た老人は、十八になる娘がいると打ち明けた。
登場人物
- 半七 神田三河町の岡っ引。逃げた将軍家の鷹を内密に探す
- 光井金之助 千駄木の御鷹所の若い鷹匠。品川の遊女屋で鷹を逃がす
- 鳥さしの老人 千駄木の御鷹所に属する餌取り。金之助の身を案じる
- お杉 目黒の村の蕎麦屋の娘。もと雑司ヶ谷の鷹匠の屋敷に奉公していた
- 吉見仙三郎 雑司ヶ谷の鷹匠。道楽者で金に困っている
- 辰蔵 村の小料理屋の亭主。小博奕も打つ
冒頭部(原文より)
一 老人とわたしと差し向いで、五月の雨のふる日曜日を小半日も語り暮した。時節柄で亀戸の藤の噂が出た。藤の花から藤娘の話をよび出して、それから大津絵の話に転じて、更に鷹匠のはなしに移る。その話を順々に運んでいては長くなるから、前置きはいっさい略して、単に本文だけを紹介することにした。
「半七捕物帳 鷹のゆくえ」岡本綺堂(青空文庫)
末尾部(原文より)
「はい、おまえさんですから申し上げますが、実はわたくしには十八になる娘がございますので……」 「十八になる娘……。おまえさんの娘なら美しかろう。それだのに、光井さんは品川なんぞへ泊るから悪い。これもみんな娘の思いだと云ってやるがいいや。ははははは」 半七は大きい声で笑った。
「半七捕物帳 鷹のゆくえ」岡本綺堂(青空文庫)
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