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右門捕物帖 へび使い小町(佐々木味津三)のあらすじ・登場人物

七夕の宵、沈んだ屋形船

  • ミステリ
  • 歴史

佐々木味津三 

文字数
22,403字
読了目安
約45分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 東京都

この作品について

佐々木味津三の捕物小説「右門捕物帖」全38話の第十七話。口数の少ない南町奉行所の同心「むっつり右門」こと近藤右門と、おしゃべりな手下の伝六、小男の善光寺辰が江戸の事件を解く連作。七夕の宵、両国河岸では上つ方の佳人が恋歌のたんざくを流し、振りそでの若衆が拾って歌を返す「たんざく流し」がにぎわっていた。その華やぎのさなか、評判の才媛を乗せた屋形船が、波もないのに揺れて沈んでしまう。冒頭の王朝風の遊びの描写と、夜の大川の捕物が対照をなす一編。

あらすじ

七月七日の宵、両国河岸のたんざく流しのさなか、式部小町と呼ばれる佳人を乗せた屋形船が、底から水を噴いて沈む。大騒ぎの川下を人足たちが捜すなか、右門は舟宿で寝転んだあと、川上に目をつけ、辰に嗅がせて手がかりを追う。船底に細工をしたのは、河童権と呼ばれる水もぐりの船頭権七だった。ところが蔵前の住まいに踏み込むと、権七は黒血を吐いて死んでおり、「よくもオレにドクを盛りゃがったな」と書き残していた。右門は伝六と辰に江戸じゅうの町名主を回らせ、町内の小町娘を父親同道で奉行所へ出頭させる。翌朝、娘を連れずに来た綿屋と畳屋の主人が、娘を美しい比丘尼の行者に預けたと打ち明けた。家に白へびが現れ、災いを払うには娘を五日間生き宮に貸せと言われたのだという。右門は、へびを飼いならした行者のかたりと見抜き、湯島天神下の祈祷所へ急ぐ。祈祷所はもぬけの殻だったが、伝六が拾った葬式道具の受取を手がかりに、右門は「けち九」と噂される小石川白山下の葬具屋九郎兵衛の土蔵に踏みこむ。そこでは三人の小町娘を前に、比丘尼行者がへびしずめの祈祷をしていた。行者はもと京のへび使いで、寺を追われた恋人の所化を取り戻すため、七百両を作ろうと迷信深い九郎兵衛から五百両をかたり取ろうとしていた。三人目の娘を手に入れるため権七に船を沈めさせ、口封じに毒を盛ったのだった。娘たちは無事で、右門は行者を八丈島へ送る。

登場人物

冒頭部(原文より)

1  ――ひきつづき第十七番てがらに移ります。  前回の七化け騒動がそもそも端を発しましたところは品川でしたが、今回はその反対の両国河岸。しかも、事件の勃発した日がまたえりにえって七月の七日。七日と申しますと、だれしも想起するものは今も昔ながらに伝わっているあのたなばた祭りです。土地土地、国々の風俗習慣によって、同じたなばた祭りもその祭り方に多少の相違があるようですが、この当時、すなわち徳川お三代ごろの江戸上流階級において、すこぶる盛んに用いられた方法は、王朝ながらの優雅をそのまま伝えたたんざく流し――俗にたなばた流しと称する催しでした。

「右門捕物帖 へび使い小町」佐々木味津三(青空文庫)

末尾部(原文より)

「でも、それにしちゃ、なんだってまたそんなけち九郎兵衛が、五百両もの大金積んで、あの比丘尼小町にはめられたんでしょうね」 「もううるせえや! 恋とご幣かつぎは、昔から思案のほかと相場が決まっているじゃねえか」  ずばりというと、思案のほかのその恋ゆえに罪とが犯した比丘尼小町をあわれむもののように、重たげな足を運ばせました。

「右門捕物帖 へび使い小町」佐々木味津三(青空文庫)

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