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右門捕物帖 青眉の女(佐々木味津三)のあらすじ・登場人物

消えた質屋の子と金無垢の大黒

  • ミステリ
  • 歴史

佐々木味津三 

文字数
22,320字
読了目安
約45分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 東京都

この作品について

佐々木味津三の捕物小説「右門捕物帖」全38話の第四話。口数の少ない南町奉行所の同心「むっつり右門」こと近藤右門と、おしゃべりな手下の伝六が江戸の事件を解く連作で、本編は女に情のこわい石部金吉の右門が「珍しくも色っぽいところ」を見せると前口上で予告される一編。牛込の質屋から十ばかりの跡取り息子が消え、同時に神棚の金無垢の豆大黒が泥の大黒にすり替わっていたという訴えから話は始まる。気乗りしない様子の右門と、むきになって走り回る伝六との掛け合いも楽しい。

あらすじ

忍から帰って半月後の六月、牛込二十騎町の質屋三河屋から、一人息子の少年が姿を消したという訴えが出る。伝六が聞き込むと、質屋の神棚に祭っていた金無垢の豆大黒が、いつのまにか泥の大黒にすり替わっていたという。右門は気のない顔ですし屋で腹ごしらえをするばかりで、伝六はかんかんになって一人で下谷へ駆けだす。だが夕方、伝六の聞き込みが行き詰まると、右門はにわかに早駕籠を仕立て、ある古道具屋に乗り込む。右小手に古い刀傷のある亭主を元は侍とにらみ、店の神棚の大黒と質屋の大黒を水に浸けさせると、どちらも泥細工で溶けてしまった。奥にいたのは、眉を落とした三十五、六の豊満な女。右門はこれを大家の後室と見抜き、誘われるままにその家で酒を飲み、伝六をやきもきさせる。翌朝、酔いつぶれたふりをして物置き小屋に閉じこめられた右門は、羽目板を破って飛び出し、箱を背負って逃げる人足を捕らえる。箱の中からは、役者のまねをさせられていた質屋の息子が現れた。少年は青眉の女の実の子だった。女は取りつぶされた二千石の旗本大久保甚十郎の妻で、身持ちが悪く、家の断絶後、じゃまな嫡子を忠僕だった質屋にくれてやっていた。ところが家が新規八百石で再興されると知り、証拠の金の大黒を手にした質屋が後見に乗り込むと早合点して、不義の相手の道具屋に少年をかどわかさせたのである。右門は事を穏便に収めて一同を戒め、女との酒で濁った身をきよめ塩で清める。

登場人物

冒頭部(原文より)

1  ――その第四番てがらです。  すでにもうご承知のごとく、われわれの親愛なる人気役者は、あれほどの美丈夫でありながら、女のことになると、むしろ憎いほどにも情がこわくて、前回の忍の城下の捕物中でも、はっきりとそのことをお話ししておいたとおり、尋常な女では容易なことに落城いたしませんので、右門を向こうへ回してぬれ場やいろごとを知ろうとするなら、小野小町か巴御前でも再来しないかぎり、とうてい困難のようでございますが、まてば海路のひより――いや、捕物怪奇談でございますから、海路ではなくて怪路のひよりとでもしゃれたほうがいきでしょう。それほどの石部金吉なむっつり右門が、今回の四番てがらにばかりは珍しくも色っぽいところも少少お目にかけることになりましたから、まことに春は価千金、あだやおろそかにはすべからざるもののようです。

「右門捕物帖 青眉の女」佐々木味津三(青空文庫)

末尾部(原文より)

 それから立ち上がると、むっつり右門はそこの三方にのっかっていたきよめ塩をひとつまみつまみあげて、ぱッぱッと自分のからだにふりかけました。職務のためのこととはいいながら、前夜来のあだがましかった青まゆの女との不潔な酒のやりとりに、濁ったからだを浄め潔めるように、ばらばらとふりかけました。

「右門捕物帖 青眉の女」佐々木味津三(青空文庫)

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