右門捕物帖 なぞの八卦見(佐々木味津三)のあらすじ・登場人物
小娘が訴える父の不思議な死
- ミステリ
- 歴史
- 文字数
- 22,610字
- 読了目安
- 約45分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
- 舞台
- 東京都
この作品について
佐々木味津三の捕物小説「右門捕物帖」全38話の第六話。口数の少ない南町奉行所の同心「むっつり右門」こと近藤右門と、おしゃべりな手下の伝六が江戸の事件を解く連作。酷暑の七月、八丁堀の右門の住まいを、九つか十ばかりの見知らぬ小娘がこっそり訪ねてくる。名ざしで右門を頼ってきた娘の訴えは、浪人の父が占いに死相を告げられたあと、奇妙な死に方をしたというものだった。米屋の娘を相手のおはじき遊び、腕ききの女すりを味方に引き込む奇策など、右門の型破りな探索ぶりと人情味が描かれる。
あらすじ
酷暑の七月、右門の留守宅をたびたび訪ねてくる小娘がいた。米屋の娘お糸を使っておびき寄せると、それは深川八幡裏に住む浪人の娘お静だった。父は中国筋の藩の祐筆だったが、殿の勘気にふれて浪人し、大の迷信家で占いの言うままに暮らしていた。十日ほど前、八卦見に死相が出ていると告げられた父は一室に閉じこもったあげく、気が狂ったように永代橋から身を投げ、行方が知れないという。右門はお静の手のなま傷から、継母の折檻を見抜く。伝六が探ると、継母は二十五、六の若新造で、夜ごとお静を表へ追い出し、六十ばかりの身分ありげな侍が出入りしていた。右門は浅草でくし巻きお由という腕ききの女すりを見つけ、捕らえるかわりに、すりの逆の技で八卦見のふところへ呼び出しの手紙を忍ばせさせる。手紙にだまされて現れた八卦見は、三両で頼まれ死相の占いを立てたと口を滑らせて捕らえられた。右門は継母の家から出てきた老侍を永代橋へ誘い、川へけ落とす。老侍が見事に泳いで岸へ上がったのを見て、右門は下手人と確信した。継母の家のかまどの下の古井戸から、袈裟掛けに斬られた父の死骸が引き揚げられる。継母は旧藩の老職である老侍と不義を重ね、八卦見を使って夫をおびえさせて斬り殺し、老侍が身投げを演じて泳ぎ帰ったのだった。右門はお静の健気さに涙し、伊豆守の屋敷への奉公を世話すると約束する。お由には足を洗って堅気になれと諭して放してやる。
登場人物
- 近藤右門 南町奉行所の同心。むっつり右門。名ざしで頼ってきた小娘のために動く
- 伝六 右門の手下の岡っ引き。右門の家の台所まで取りしきる世話焼き
- お静 深川八幡裏に住む浪人の娘。父の不思議な死を右門に訴えにくる
- くし巻きお由 浅草を流す腕ききの女すり。右門に見込まれて探索を手伝う
- 継母 お静の継母。お静とは姉妹ほどにしか見えない若新造
冒頭部(原文より)
1 今回はその第六番てがらです。 事件の端を発しましたのは、前回のにせ金事件がめでたく大団円となりましてから約半月ほどたってからのことでしたが、半月のちといえばもちろんもう月は変わって、文月七月です。ご承知のごとく、昔は太陰暦でございますから、現今とはちょうどひと月おくれで、だから七月といえば、まさに炎熱のまっさいちゅうです。
「右門捕物帖 なぞの八卦見」佐々木味津三(青空文庫)
末尾部(原文より)
「そうそう、まだたいへんなことを一つ忘れていたっけよ。松平伊豆守様がまえからお小間使いをひとりお捜しだったからな。お静坊はあしたにもおじさんが伴って、お屋敷へつれていってあげようよ。おまえならば、おじさんが親代わりになってもいいからね」 いうと、そして右門はそっと近よって、感激のためにかいよいよそこに泣きよじっているお静のふっさりとしたうしろ髪を、黙ってやさしくなでさすりました。
「右門捕物帖 なぞの八卦見」佐々木味津三(青空文庫)
原文を読む
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