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右門捕物帖 卍のいれずみ(佐々木味津三)のあらすじ・登場人物

消えた牢破りと卍の立て札

  • ミステリ
  • 歴史

佐々木味津三 

文字数
27,362字
読了目安
約55分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 東京都

この作品について

佐々木味津三の捕物小説「右門捕物帖」全38話の第八話。口数の少ない南町奉行所の同心「むっつり右門」こと近藤右門と、おしゃべりな手下の伝六が江戸の事件を解く連作で、本編は功名争いの相手あばたの敬四郎との三度目の競り合い。残暑の八月、長崎奉行から預かった科人が、穴も掘らず壁も破らずに伝馬町の牢から姿を消した。責任者の敬四郎が顔色を失うなか、右門はあえて相手の縄張りに乗り出す。ついで日本橋に、ある浪人に天誅を加えたと記した謎の立て札が現れる。伝六の忠義ぶりと、右門の度量が光る一編。

あらすじ

八月上旬、長崎奉行から預かっていた科人の源内が、伝馬町の牢から跡形もなく姿を消す。担当のあばたの敬四郎があわてるなか、右門は病人だまりに盛られた清め塩から、前夜牢死者が出たと察し、牢医の玄庵から、その死骸がふたり分は入れそうな大きな寝棺で運び出されたこと、引き取りに来た男の右乳下に卍のいれずみがあったことを聞き出す。破牢者は寝棺に死骸と同乗して抜け出したのである。ところが伝六が手配した非人を敬四郎に横取りされ、伝六は悔し泣きする。そこへ伝六が、日本橋のたもとに卍の符丁で「恒藤権右衛門に天誅を加えた」と記した立て札が立っていたと知らせる。右門が道灌山の恒藤の家を訪ねると、妻女は、夫は辻占売りの男に斬り殺されたと訴え、仏は顔をめった斬りにされていた。敬四郎は破牢者を追って中仙道へ旅立つ。右門は、妻女から届いた礼状の墨色が立て札と同じで、仏の右乳下にも卍のいれずみがあることなど、いくつもの不審を数え上げ、魚屋の若い者の証言や、猫に焼き魚を取られた一件から、家の中に誰か潜んでいると見抜く。翌日、旅から空手で戻り頭を下げた敬四郎を伴い、右門は槍を手に恒藤の家へ乗り込んで、押し入れの天井から本物の権右衛門を引きずり出した。権右衛門は長崎の密貿易の一味「卍組」を裏切った男で、討っ手として破牢してきた源内を返り討ちにし、顔を潰して自分の身代わりに見せかけたのだった。右門は子ゆえの罪に情けをかけて遠島を上申し、残る卍組の三人を捕らえる策と手柄を敬四郎に譲る。

登場人物

冒頭部(原文より)

1  ――今回は第八番てがらです。  それがまた因縁とでも申しますか、この八番てがらにおいても、右門はまたまたあの同僚のあばたの敬四郎とひきつづき第三回めの功名争いをすることになりましたが、事の起きたのは八月上旬でありました。

「右門捕物帖 卍のいれずみ」佐々木味津三(青空文庫)

末尾部(原文より)

 すると、右門が言下に答えました。 「拙者へのお礼よりも、これから先、ここにいる伝六なぞを、あまりむごく扱わぬことがなによりでござりまするな。お互いこういうかわいい小者があってこそ、お上のご用も勤まるのでござりまするからな」  そして、そこに敬四郎がいるというのに、右門はたったそれだけいってしまうと、なにごともなかったような顔つきで、もうつんとあごのひげをまさぐりだしました。

「右門捕物帖 卍のいれずみ」佐々木味津三(青空文庫)

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