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半七捕物帳 かむろ蛇(岡本綺堂)のあらすじ・登場人物

明神山に立つ切禿の少女

  • ミステリ
  • 歴史

岡本綺堂 

文字数
23,469字
読了目安
約47分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 東京都

この作品について

岡本綺堂「半七捕物帳」の一編。房州鋸山で蛇に出会った語り手の土産話から、半七老人が蛇にまつわる一件を語る。小日向水道端の氷川明神の山には、切禿の少女の姿で現れ、見た者は三日のうちに死ぬという「かむろ蛇」の言い伝えがあった。安政五年、江戸にコロリ(コレラ)が大流行した秋、水道町の老舗の煙草屋関口屋の母娘と女中が明神へ参詣した帰り、杉木立の陰に切禿の少女を見てしまう。疫病の恐怖に覆われた町で、迷信と人の企みが絡み合う一話。

あらすじ

安政五年八月、コロリの大流行のさなか、小日向水道町の煙草屋関口屋の女房お琴、娘お袖、女中お由が氷川明神に参り、曇った山道で切禿の少女を見て逃げ帰る。翌日、軒に吊した八つ手の葉に「おそでしぬ」と虫食いの文字が浮かぶ。裏長屋の大工年造がコロリで急死し、その通夜には白い着物の少女が関口屋の裏口を覗いていた。年造は湯島の早桶屋殺しの下手人として半七の子分善八に追われていたが、間に合わなかった。数日後、お由が寝床で「蛇」と叫んで死に、蝮に噛まれたらしいとされる。お由は実は勘当された主人の兄次右衛門の娘で、次右衛門は死骸の引き取りを渋って大金を要求する。お袖は寝つき、長屋には年造の幽霊が出るという噂が立ち、関口屋では女房と小僧がコロリで死ぬ。主人次兵衛は観念して兄に六百両を払う。ところが次右衛門が「大……年……年造」と言い残して殺される。半七は長屋の煙草売り大吉が怪しいとにらみ、大吉の父が寺男をする牛込の万養寺の裏の芒原で、大吉父子を捕らえる。地中からは年造の死骸が出た。かむろ蛇の怪異は、次右衛門とお由、お由と通じた大吉が、お袖を亡き者にしてお由を跡継ぎにしようと仕組んだ芝居で、少女は芝居の子役だった。お由はお袖を蝮に噛ませようとして、自分が噛まれたのである。年造は焼き場で息を吹き返しており、分け前の争いから大吉と組んで次右衛門を殺し、その後、大吉父子に殺されたのだった。

登場人物

冒頭部(原文より)

ある年の夏、わたしが房州の旅から帰って、形ばかりの土産物をたずさえて半七老人を訪問すると、若いときから避暑旅行などをしたことの無いという老人は、喜んで海水浴場の話などを聴いた。  そのうちに、わたしが鋸山へ登って、おびただしい蛇に出逢った話をすると、半七は顔をしかめながら笑った。

「半七捕物帳 かむろ蛇」岡本綺堂(青空文庫)

末尾部(原文より)

云いかけて、老人は笑い出した。 「大笑いと云えば、こんな事があります。明治以後、氷川明神が服部坂へ移されてからのお話ですが、小石川の縁日にかむろ蛇の観世物が出ました。これは昔から氷川の明神山に棲んでいた大評判のかむろ蛇でございと云うんですが、よくよく聞いて見ると、どこからか大きい青大将を生け捕って来て、その頭へコールターを塗って、頭の黒いかむろ蛇と囃し立てていたのだそうで……。明治の初年には、こんないかさまの観世物がまだ幾らも残っていました。ははははは」

「半七捕物帳 かむろ蛇」岡本綺堂(青空文庫)

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