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右門捕物帖 のろいのわら人形(佐々木味津三)のあらすじ・登場人物

丑の刻参りの侍が次々と死ぬ

  • ミステリ
  • 歴史

佐々木味津三 

文字数
32,423字
読了目安
約1時間5分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 東京都

この作品について

佐々木味津三の捕物小説「右門捕物帖」全38話の第二十四話。口数の少ない南町奉行所の同心「むっつり右門」こと近藤右門と、おしゃべりな手下の伝六が江戸の事件を解く連作。虫の鳴きだす八月の初め、伝六は軒下につるした兵児帯を見つめて首をひねっていた。朝方、練塀小路で見かけた死骸の話をしかけたところへ、奉行所から、練塀小路と柳原の二か所で藩士らしい侍が無残な死を遂げているとの急達が届く。功名争いの相手あばたの敬四郎の追跡をかわしつつ、右門は丑の刻参りの名所をめぐる。全38話のなかでも最も長い部類の一編。

あらすじ

八月初め、練塀小路の榎妙見と柳原のひげすり閻魔の境内で、藩士らしい侍が一人ずつ、のど笛をえぐられて死んでいた。右門はあばたの敬四郎の追跡を振りきって現場を見るが、死骸を引き取りに来る者はない。右門は上野の寛永寺の学寮で、江戸で丑の刻参りに使われる五か所を聞き出し、その夜、湯島坂下の三ツ又稲荷で張りこむが、待ちぼけを食う。翌朝、伝六は本銀町の白旗金神でも侍が同じようにやられていたと知らせ、ほこらのうしろからわら人形を持ち帰った。人形には「巳年の男、二十一歳」と書かれていた。その夜、三ツ又稲荷近くで倒れた侍の胸に、梅鉢型の泥の足跡を見つけた右門は、下手人を犬と見定める。一方、敬四郎が捕らえた下手人は、騒ぎに便乗した偽者で、八丈島を抜けた凶状持ちの浪人だった。右門はその一味の始末を敬四郎に任せ、のろわれている二十一歳の巳年の男を武鑑で調べさせる。浮かんだのは三万石の若い大名。屋敷の門番から、忠義一途の江戸家老が罪なくして閉門となり、その家老の娘が利口な秋田犬を連れて毎夜ほこら回りをしていると聞き出す。最後の夜、三ツ又稲荷に張りこむと、主君をのろいに来た藩士たちに黒い犬が飛びかかり、懐剣を手にした家老の娘田鶴が現れた。家老を退けてお家横領を企む一味が、毎夜主君をのろっていたのを、田鶴が犬を慣らして一人ずつ仕止めていたのである。右門は残る二人を倒し、お家の秘密を守ると約束する。

登場人物

冒頭部(原文より)

1  ――その第二十四番てがらです。  時は八月初旬。むろん旧暦ですから今の九月ですが、宵々ごとにそろそろと虫が鳴きだして、一年十二カ月を通じ、この月ぐらい人の世が心細く、天地蕭条として死にたくなる月というものはない。

「右門捕物帖 のろいのわら人形」佐々木味津三(青空文庫)

末尾部(原文より)

「てへへへ。うれしいね。え! ちょいと、夢のまにまに念じまいらせ候とは、陰にこもって思いが見えて、うれしいじゃござせんか。いいや、なになに、お奉行さまからは表だってのご賞美はなくとも、こういうやさしいところが、夜ごと日ごとにぽうっとなって念じてくれりゃ、ね、だんな、いっそありがてえくらいじゃござんせんか。え? いけませんかね」  だが、名人はにこりともしないで、なんの変哲もないというように、あごをもてあそんだままでした。――いい虫の音です。そのとき、いい秋虫の朝音が、チリチリと庭の茂みからきこえました。

「右門捕物帖 のろいのわら人形」佐々木味津三(青空文庫)

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