右門捕物帖 笛の秘密(佐々木味津三)のあらすじ・登場人物
山王祭りの屋台で倒れた牛若丸
- ミステリ
- 歴史
- 文字数
- 21,791字
- 読了目安
- 約44分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
- 舞台
- 東京都
この作品について
佐々木味津三の捕物小説「右門捕物帖」全38話の第五話。口数の少ない南町奉行所の同心「むっつり右門」こと近藤右門と、おしゃべりな手下の伝六が江戸の事件を解く連作。本編の幕開けは江戸三社祭りのひとつ、山王祭り。将軍家光が矢倉から山車を上覧するさなか、四谷伝馬町の屋台で牛若丸に扮して笛を吹いていた若者が、泡を吹いて倒れる。知恵伊豆に呼び出された右門が、祭りの雑踏のなかで探索に乗り出す。山車や引き物を並べる冒頭の祭りの描写と、伝六の妹・乃武江をめぐる軽口も楽しい。
あらすじ
山王祭りの日、千代田の城内を練る山車のうち、四谷伝馬町の屋台で牛若丸に扮して笛を吹いていた男が、将軍家光の上覧のさなかに泡を吹いて倒れ、そのまま死んでしまう。牛若役は町内の糸屋の若主人で、三十近い美男の独り者だった。伊豆守の命で呼ばれた右門は、笛に毒が仕込まれていたと見て、町内の者を調べるが手がかりはつかめない。右門は伝六の妹で糸屋に縁のある乃武江から聞き込ませ、若主人に小唄の師匠の情婦がいると知るが、その師匠は七十に近い老婆だった。行き詰まったところで伝六が、糸屋に残る若主人の笛の中に紙が詰めてあるのを見つける。それは仲間に裏切られたと恨み、つらあてに死ぬと記した書き置きだった。毒は自分で仕込んだのである。書き置きの「いまに世間に知れる」の一句に目を留めた右門は、伝六に夜ふけの奉行所の訴えを洗わせ、そのなかの化け物の出る空き家のうわさに目をつける。枕と蚊やりを持ってその家に泊まりこんだ右門は、生き血のしたたる怪異にもひるまず、家じゅうの障子に火を放つ。庭の大いちょうの根もとのうろから、いぶり出された男たちと洗い髪に白衣の女が這い出してきた。一味は空き家の地下に穴倉を掘って三万両のにせ金を鋳造していたにせ金使いで、住み手をおどして寄せつけぬよう化け物騒ぎを起こしていた。糸屋の若主人は女をめぐって首領と争って仲間割れし、腹いせに祭りの舞台で死んだのだった。
登場人物
- 近藤右門 南町奉行所の同心。むっつり右門。祭りの怪死の探索を伊豆守に命じられる
- 伝六 右門の手下の岡っ引き。妹の乃武江を使って聞き込みに走る
- 糸屋の若主人 四谷伝馬町の屋台で牛若丸に扮した美男の独り者。笛を吹くさなかに倒れる
- 乃武江 伝六の妹。ところてん屋に縁があり、兄の聞き込みを手伝う
- 洗い髪の女 三十がらみの油ぎった中年増。化け物の出る空き家にかかわる
冒頭部(原文より)
1 ――今回はその五番てがらです。 事の起こりましたのは山王権現、俗に山王さんといわれているあのお祭りのさいちゅうでした。
「右門捕物帖 笛の秘密」佐々木味津三(青空文庫)
末尾部(原文より)
すると、伝六が急にくつくつ笑いながらいいました。 「だんなも悪党をつかまえるこたあ天下一品だが、あっしのような善人には眼力が届かんとみえらあ。あの日四谷からの帰りがおそすぎたでしょう。なんのために、あれっぽちのねた洗いがあんなにおそすぎたかご存じですかい。ちゃんともうあのとき妹のやつを家へひっぱっていって、早いところ五、六本すすったんですよ。どうです。くやしかありませんか」 憎めないやつで、かわいいことをとうとう白状してしまいましたものでしたから、右門は目を細めながら、この愛すべくむじゃきな部下をしみじみと愛撫するようにながめていましたが、いつにもなく右門に似合わない述懐をもらしました。 「きさまがべっぴんで、女の子だったら、ひと苦労してみるがな」
「右門捕物帖 笛の秘密」佐々木味津三(青空文庫)
原文を読む
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