正月の思い出(岡本綺堂)のあらすじ・登場人物
戦勝の新年に叔父を送った日
- 文字数
- 2,019字
- 読了目安
- 約4分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 随筆
この作品について
岡本綺堂が、日清戦争の戦勝に沸いた明治28年の新年に、叔父の葬儀を営んだ暗い思い出を語る随筆。世間の華やぎと一家の悲しみの落差、青山墓地で偶然出会った旧友との別れが、静かな筆致で綴られる。
あらすじ
ある雑誌の問いに、筆者は最も記憶に残る正月として明治28年を挙げる。日清戦争の勝ち戦で東京は例年にない好景気の新年を迎えたが、麹町の叔父の家は暮れの30日に主を亡くし、柩を守って年を越した。元日には何も知らない年始客が次々に訪れ、祝儀と悔やみが入り混じって応対に困る。二日に青山墓地で葬儀を営み、国旗や松飾りで華やぐ町を通って柩を送った。去来の句を思い出して足が進まなかったという。葬儀のあと、墓地で中学の同期生の少尉に偶然会うが、これが最後の対面となった。同じ日に二つの思い出が残ったと結ぶ。
登場人物
- 筆者の叔父 麹町の一番町に住んでいた。明治27年の暮れの30日に亡くなった。
- 吉田君 筆者の中学の同期生。一年志願兵の少尉で、青山墓地で出会った。のち台湾で戦死した。
- 去来(きょらい) 俳人。甥の柩を送ったときの句が引かれる。
冒頭部(原文より)
ある雑誌から「正月の思い出」という質問を受けた。一年一度のお正月、若い時から色々の面白い思い出がないでもないが、最も記憶に残っているのは、お正月として甚だお目出たくない、暗い思い出であることを正直に答えなければならない。
「正月の思い出」岡本綺堂(青空文庫)
末尾部(原文より)
青山墓地の別れがこの世の別れであった。同じ日に二つの思い出、人の世には暗い思い出が多い。
「正月の思い出」岡本綺堂(青空文庫)
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