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百物語(岡本綺堂)のあらすじ・登場人物

百すじの燈心が消えるとき

  • 怪奇

岡本綺堂 

文字数
3,571字
読了目安
約7分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 群馬県

この作品について

岡本綺堂の怪談集に収められた一編。弘化年間の秋の雨の夜、上州のある大名の城内で、夜詰めの若侍たちが百物語を催す。青い紙で覆った行燈に百すじの燈心を入れ、一話終わるごとに一すじずつ消しに行く——その道すがら、八十三番目の中原武太夫は、暗い座敷の壁ぎわに白い女が首を縊って垂れているのを見た。人か妖か、正体を確かめようと夜明けまで見張った男たちの前で起きたことを、乾いた筆致で語る。綺堂の怪談の身上である、説明を急がず余韻だけを残す語り口が際立つ小品である。

あらすじ

弘化元年とか二年とかの九月、上州のある大名の城内でのこと。雨のやまない物すごい夜、夜詰めの若侍たちの座で、一座の先輩と仰がれる中原武太夫が言い出した。化け物があるかないか、今夜こそ百物語を催して試してみようではないか、と。青い紙で口を覆った行燈に燈心を百すじ入れ、五間離れた奥の書院へ据える。一話ごとに一人ずつ、暗い座敷を手探りで通って燈心を一すじ消し、そばの鏡を覗いて戻るという段取りである。八つ近くになって八十三番目に立った中原は、書院からの帰りに、通ってきた座敷の壁ぎわに白いものが垂れているのを見た。引き返してよく見れば、首を縊った白い女である。気丈な中原は何も言わずに座へ戻ったが、百話が終わってから尋ねてみると、七十五番目から後の者は皆それを見ていて、臆病者と笑われるのを恐れて黙っていたのだった。行燈をともして改めると、十八九の美しい女が白無垢に白縮緬のしごきを締め、髪をふり乱して下がっている。夜が明けても姿は消えない。やがて役人が駆けつけ、それが殿のお夜伽にも召されるという奥勤めの中老・島川であることが分かった。だが奥を検めると島川は病床にありながら生きている。そして表に戻ってみると——。

登場人物

冒頭部(原文より)

 今から八十年ほどの昔――と言いかけて、O君は自分でも笑い出した。いや、もっと遠い昔になるのかも知れない。なんでも弘化元年とか二年とかの九月、上州の或る大名の城内に起った出来事である。  秋の夜に若侍どもが夜詰めをしていた。きのうからの雨のふりやまないで、物すごい夜であった。いつの世もおなじことで、こういう夜には怪談のはじまるのが習いである。

「百物語」岡本綺堂(青空文庫)

末尾部(原文より)

 その本人の島川は一旦本復して、相変らず奥に勤めていたが、それからふた月ほどの後に再び不快と言い立てて引籠っているうちに、ある夜自分の部屋で首をくくって死んだ。前々からの不快というのも、なにか人を怨むすじがあった為であると伝えられた。  してみると、さきの夜の白い女は単に一種の妖怪に過ぎないのか。あるいはその当時から島川はすでに縊死の覚悟をしていたので、その生霊が一種のまぼろしとなって現われたのか。それはいつまでも解かれない謎であると、中原武太夫が老後に人に語った。

「百物語」岡本綺堂(青空文庫)

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